第15話 反面教師

では、どちらのバイトを辞めるか...と考えた時、あまり悩まずにドラッグストアの方を切り捨てることにした。

理由はいくつかあった。


ひとつは、労働時間だ。

ドラッグストアはシフトの関係で、19時から24時という労働時間がメインだった。

対して、大型電器店の労働時間は、閉店が21時であったので、17時から21時などといった物が多かった。


ふたつめは、働いた年数だ。

アルバイトの仕事など、1年も経てばある程度把握できてしまう。

だったら、せっかくだからいろんなバイト、職場を経験したい。

すでにドラッグストアでは2年も働いていた...となれば、どちらを辞めるかとなれば、ということだ。


だが、そんなふうに本格的に始まった大型電器店でのアルバイトは...今思えば、あまりいい思い出はない。

もともとオタクだったから、アニメDVDやCDを扱える仕事は楽しかった。

また、高校卒業間際から音楽にのめり込みつつあったので、自分の好きなバンドのCDをバイト先で購入できるというのは、とても都合はよかった。


だが...その職場というのは、とてもやる気が感じられなかったのだ。

そもそも、あまり客が来るような場所ではなかった。

田舎の大型電器店の平日の来店数なんか、たかが知れている。

加えて、働く時間帯は平日の夜が多かった。

とするとどうなるかというと..ただ勤務時間を無為に過ごすような事が多かった。

当然ながら、やる気はどんどん削がれていく一方だった。


そんな状況だったからだろうか。

当然ながら職場の課題というものがいくつかあったが、それを解決しようという意志が、職場の空気からは感じられなかった。

例えば、特典のわたし忘れというのがとても多かった。

その解決策として、一覧表を作るなんかして、あれこれやってみたのだが...結局、定着しなかった。

まぁ今思えば、一覧表という方法はかなりダメな方法だったのだが。


ともあれ、なぜかバイト仲間の人数は多く、みんな仲が良かったけど、仕事という意味では何もプラスにならなかった。

完全に反面教師として、この大型電器店バイトの経験は活きている。

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