第51話 新たなる旅立ち

「トオル! トオル!」

 揺さぶり過ぎだって。目を開けるとリンもツバキもジュジュも涙をこぼし俺を揺さぶっている。

 ニタもルートでさえ、涙ぐんでいる。

「起きた! 起きたって!」

 これ以上揺すぶられたらたまらない。


「すまない。勇者。死に方が死に方だったので。上手く転生できなかった」

 魔王のうっかりミスで俺もう一度殺されたよ。

「できないのかよ!」

「いや、あと十年ぐらい育てば出来ると思う」

 十年経ってもまだ思うの範囲なんだけど……。

「じゃあ、しゃあないな。十年ここでお前と魔物退治してやるよ」

「え?」

「世界中なんだし助っ人がいるだろ?」

「私も! 私もする!」

 リンが声をあげる。リンは涙を拭って魔王を見てる。

「私も!」

 ツバキまで参加してきた。里はいいのか?

「私も!」

「ジュジュは十八までだろ? 世界樹行かなきゃいけないから」

「でも……」

「では私が年齢を止めようか?」

 魔王の申し出、少し怖いんだが、さっきのうっかりミス。

「それは……出来るのか? 本当に?」

 疑り深い勇者。いや、殺されたからな。さっき。

「私は生まれた時からこのままだから」

 え? 実際はルートぐらいってこと?……本当の俺と同い年ぐらいってことか。転生含めれば恐ろしい年だけど。

「僕もいい? トオル」

「ニタいいのか? 修行?」

「こっちの方が修行になるから」

 いつものニタスマイルだ。

「俺の勇者伝説も魔王伝説もいつまでも続くのか!」

 ああ、忘れてた。終われない物語を抱え込んじゃった人。

「いいぞ! 書いて書いて書きまくれる! 夢のようだ!!」

 ルートは放っておいてもいいみたいだ。

「という事だ。六人増えるけどいいよな! この城広いし……なあ、ところでお前って名前ないの?」

「ああ、生まれて死んでを繰り返す前はあったような気がするけど、ずっと一人だったから忘れてしまった」

「じゃあ、呼びにくいから名前つけていい?」

「え? ああ、うん」

「じゃあ、サクラ」

「サクラ……ってなんだ?」

 ああ、この異世界の生き物や植物あっちの世界とほとんど同じなのに桜はそう言えば見たことがなかった。

「俺が前にいた世界でお前の目と髪の色と同じ色の花を咲かせる木の名前だ。春になると葉がつく前に花だけ咲かせる。春になると一面をお前の目と髪の色に辺り一面桜色に染めるんだ」

「ふーん。まあ、どんなかわからないが気に入った」

「じゃあ、サクラ。魔物を倒しに出かけよう! リンもツバキもジュジュもニタも!」

「俺は?」

「じゃあルートも!」



 俺たちは駆け巡るんだろう。魔物を倒して世界中を駆け巡る旅に出るんだ。

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