第28話 下船
あっという間に眠りに落ちて、どうやら治癒が終わり寝床に運ばれてたとうだ。窓の外を見ると夕方。そして、船は止まっている。どうやら到着したようだ。
すぐに廊下に出てみんなを探す。大丈夫か?
激闘だったみたいだ。今、ジュジュはニタを治癒中だ。
リンのメイド服もツバキの服も切れている。
「大丈夫か! そこもここも、こっちも!」
数えきれない服の切れ跡。
「大丈夫。ジュジュにちゃんと治してもらったから」
肌が出てるからかリンは恥ずかしそうに大きく切れてる箇所を手で抑えている。メイド服は恥ずかしくないのに、それは恥ずかしいんだな。
「そうだよ。全部治してもらってるから」
全部怪我してたんだな、ツバキ。ツバキ、さすが露出にこだわってるだけあるな、恥ずかしさがみじんもない。こっちが目を背けてしまうだろ。隠せよ! 少しは。
とにかく人前に出ていい格好じゃない二人。
「着替えて来い。下船するまで時間あるかわかんないからな。ついでに荷物もまとめとけよ」
「うん。わかった」
リンはそういうとそそくさと部屋へ行く。
「ああ。じゃあ、後でな」
ツバキはマイペースに動き出した。なんだよこの差は。
「ニタ、大丈夫か?」
もう傷はない。浄化中かな?
「うん。今、毒をとってもらってる」
「貝の毒なかなか取れなくって」
ジュジュはこちらを見ずにニタの足に集中している。
「そうか。下船の準備でもしておくから」
「うん」
「ああ」
邪魔したら悪いんで退散する。
船長を見つけた。結局、いくらの船代か聞かずに乗ってしまった。これ、マズイよな。どうしようか、すごい値段言われたら。実際他の船はすごい値段だったしな。
「おう、坊主!」
船長最後まで俺を坊主扱いだな。まあ良かった、話かけてくれて。
「あの、船の料金は……」
聞きにくい! いくらになるんだ。
「おお! そうか。うーん。今回はいらないよ。逆に払いたいぐらいだが、こっちもいっぱいいっぱいなんでな」
良かった。……いっぱいいっぱいなのに俺らを乗せた船長。そんなんだからいっぱいいっぱいになると思うが。
「ありがとうございます!」
ここは素直に好意を受け取ろう。
「明日朝出航するからゆっくりしていけよ」
ニタ達の方を見て言ってる。周りも大勢治療されてる。夜番を呼ばないまでも魔物の大群にやられていたんだろう。
「はい」
「勇者伝説楽しみにしてるからな!」
そう言って去って行く船長。絶対、船長は勇者伝説のファンだな。
ただになったら安心した。まあ、毎日が勤務状態だったからな。
部屋に戻り荷物をまとめる。ニタの荷物もした方がいいかな? 迷っていたらニタが来た。
俺はベットに座りニタの荷造りをボケっとしながら見ていた。
「トオル。今日はこのまま宿屋に行って、明日はどうする? 僕の服もボロボロだし、ツバキもリンも着れなくなってるだろうし」
ニタ後ろからでもわかる。耳赤いぞ。ツバキのあたりで急に赤くなった。まあ、あのツバキの姿は赤面ものだからな。
「みんな疲れてるし、買い物したりゆっくりするか」
「そうだね。明後日から出発でいいね」
「ああ」
ん! そうだ! 船長が言ってたよな、今度の街の北側に勇者のマントがある塔があるって。
どうしよう。これって聞いたから行ってもいいのか? うわ、どうしよう。スルーしたらダメだよな。っていうかマントが欲しい。
こういうことか、勇者は勇者伝説を読んではいけないって。知ったら知ったで動きづらい!
ニタの荷造りが終わったので、ジュジュ達の部屋へ行く。
トントン
ノックすると、すぐに返事がある。
「はーい」
リンの返事だ。
「もう荷造り終わったか?」
まあ、無理だろうな。ジュジュが遅かったから。
「まだなの!」
ジュジュの返事。予想通りだな。
「食堂で待ってるから急がなくていいぞ! ジュジュ」
「わかった」
「はーい」
「うん」
なぜ三人分の返事が帰ってくるんだ。先に部屋にいったツバキとリンもまだ荷造り中なのか?
とにかくニタと食堂で待つ。
ニタと話をしている間もずっと塔をどうしたらいいか迷っている。船長いわく勇者のマントとお供も何かあるみたいだ。まあ、どうせ一回キリだろうけど、やっぱり持っておきたい。どうせ塔は魔物がいるんだろうがこれだけ魔物を切ってきたら、塔に魔物がいたってそんなに気にならない。
船に乗る前とじゃあ、大違いだな。魔物から避けるように旅してたもんな。まさかの船での成長だな。
「トオル! お待たせ」
ニタも待ってたけど、リン。
「じゃあ、行こうか」
立ち上がった俺にツバキが聞いてくる。
「あれ? 支払いは?」
「船長がいいってさっ」
「ラッキーだね」
ニタが言う。今まで話をしててニタ、船代の事を聞かなかったけど、船代いくらになるか不安じゃなかったのか?
「さあ、行こうか!」
船長にお礼を言って船を降りる。また、船長、勇者伝説の話をしてる。好きなんだなよっぽど勇者伝説。
それにしても残念だった。あの勇者伝説好きの船長が仲間になるんじゃないかって期待したんだけどな。剣も魔法も使えてしかもすっごいタフ。仲間になってくれたら助かったんだけど、船があるしから無理だよな。一応船長なんだし。
というか読んで楽しんでるだけだな。まあ、普通はそうするか。魔王を倒しに気軽には来ないよな、リンとツバキ以外は。
すぐに宿屋に入って休憩する。疲れがみんな酷い。
ジュジュも治癒し通しだったんだろう。あの服ツバキやニタやリンの傷を全部治してるんだから。
俺も眠れるのか? 昼間寝てたし。と思っていたのにベットにニタと同じように入ったら俺の記憶はなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます