第29話 占い師は語る

 朝日で起きるのどれくらいぶりだろう。そして、魔物の襲撃かと思い廊下に飛び出る事なく起きるのは。




 さあ、気合入れていかなくては。みんな服がボロボロだ。ジュジュ以外は。買い足しが必要だけど! ここからが重要だ! なんとしてもリンとツバキに普通の服を買わせる事!

 俺のも普通の服を買い足したい。あの襲撃がリンとジュジュの選んだちょっとって思う服を台無しにしてくれた。ここは何としても俺の意向を反映させなくては。



 街が大きくて大はしゃぎな三人娘。果たして俺にコントロール出来るだろうか?




 そして気になるのは塔だ。誰か、占い師! 言ってくれ俺に塔に行く指示をくれ!

 何人もの占い師の前を横切っても全く反応がない。




 その間に俺もニタも服を購入。ちょこちょこリンが服を勧めてくるが、何とか乗り切り自分の趣味で選べた。ニタはまたツバキの一言に踊らされてる。



 リンとツバキにそれはとか、あんまりかなとか、いろいろ言ってなんとかメイド服や露出すぎて目のやり場に困る服は避けて行く。メイド服普通に服屋に置いとくなよ! どういう必要性があるんだ?

 その間も、もう服はいらないだろ? ジュジュ。と何度も言わないといけない。疲れる、はしゃいでる三人に疲れてる俺にニコニコみんなを見てるニタ。



 そして占い師に呼び止められない勇者一行。どうしよう。ニタに言うべきなのか? リンもこの先知ってるんだろ? なんでいつまでもはしゃげるんだよ。


「うわー!」

 ひときわ目を引くファンタジーな店に声出てるよ、ジュジュ。そして、吸い込まれるように入って行く。ああ! また止めに入らないと何を買うかわからない。

 ジュジュを追いかけみんなで店の中にはいる。ジュジュは嬉しそうにしてる。それ? それはやり過ぎだ。背中に羽が生えてるぞ。世界樹に行ったらジュジュにも羽出てくるから、必要ないだろその服は。というかフェアリーを隠してるハチマキの苦労が台無しなんだけど。

 ジュジュの暴走を止めようと俺も店の奥へ行く。


「おお! 勇者様!」

 へ?

「お待ちしておりました」


 って、店の奥にある椅子に座って言う言葉じゃないだろ? 明らかにどっからどう見ても占い師に見える男がいた。おいおい! 占い師、店やるのはいいけど、勇者が来る時期くらい外をチェックしてくれよ。


「勇者様、この街の北側に塔があります。その塔には……」


 占い師が語り出した。すっごい大事な情報なのに、ジュジュがこの店に入って俺がさらに止めに中に入らないと、勇者である俺に塔の事を伝えられないし。もう少し頑張ってくれよ、占い師。勇者にその情報を伝える気はあったのか?


「……勇者様、塔に行き、マントを手に入れ魔王を倒せ!」


 おい! なんで最後、命令口調なんだよ。また上から目線だよ占い師。


「ああ。わかった。ジュジュ行くぞ」


 ジュジュの手を取り店の外へと出る。ジュジュはファンタジー色いっぱいな服を両手に抱えていたのでその辺に置いて置く。背中に羽はまだいらないぞ!



 ひとまず北側の塔にはこれで心おきなく行ける。


 疲れてるしすぐに宿屋へ向かう。もうみんなの分、必要な枚数の服は買ってる。なんとか過激な服は避けたけど、あくまで過激なだ。それ以上は止めれなかった。みんなで一緒にいるから、見た目は相変わらずな一団だろう。



 早くに眠りにつく。いろんな意味で疲れる日だった。勇者伝説聞くんじゃなかった。ルールは大事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る