第26話 船長は魔法使い

 

 ドンドン!

 ドンドン!



 今度は呼ばれなかった。ただの大量! って言葉が聞こえてきた。俺行かないと!

 つるぎを持ってすぐに廊下に出て甲板へと急ぐ。ぞくぞくと夜の当番の剣士や魔法使いも出てくる。




 イカかよ! また甲板にいるし。こいつら毒がある。油断できない。

 すぐに船の下を見に行く。魔物がウジャウジャいる。よし、背後も気にしつつ地雷切り。




 ドドド、ドーン!!




 前方のイカを切りながら足場を確保しつつ向かう。

 地雷切り。やっぱり……


 ドドド、ドーン!!



 そそくさ左側にも移動しつつ魔物を切る。

 地雷切り。……



 ドドド、ドーン!!



 後ろは? そこもか。イカの巣だな。

 後ろに行きつつ魔物切る。足場最悪だ。なんとか後ろについて地雷切りを放つ。



 ドドド、ドーン!!



 ここからは切りに切って切りまくる。甲板に戻ると焦げ臭い。見ると死骸のイカは焼かれてる。

 おお! ヌメヌメ感が消えてる。が、すぐにその上にイカの死骸が重なって行く。

「離れろ!」

 船長の声がする。ああ、焼いたの船長か。イカのいない場所まで避難する。目の前が一瞬にして焼けるそして、すぐに消えた。船や人を焼かないようにしてるんだろう。何気に船長、すごい魔法使いだよな。船長、魔法使いには全く見えないが。



 甲板にいた最後のイカが倒れた。

 今度は侵入を防ぐ為に空いてる場所へ行く。足元のイカの感触を気にしつつなんとかたどり着きイカの魔物を倒して行く。下を見るともう少しだ。切って切って切りまくる。こればっかりだな。



 はあー。終わった。一応他も見て確認。みんなその場に座ったり、剣を置いたりと戦闘の激戦ぶりを物語っている。



 だがこれで終わりじゃなかった。船長が焼いてくれたので、まだ運びやすいけど紫の液体はどうしようもない。

 何層にも重なった魔物を次から次へと海に投げ込む。早くしないと作業中に次がきたら厄介だ。



 なんとかすべての魔物を海へ落とし、それから掃除がはじまる。キツイ! 早く休みたい。太陽は真上だ。まだ半分しか寝てないし。しかも昨夜の激闘のあとだ、疲れも半端じゃない。



 夜当番静かに部屋に引き上げて行く。また次来たら残ってしまうから。



 再びベットへ。



 あっという間に寝たようだ。ベットに横になった瞬間から記憶ないし。

 もう夕方だ。少し暗くなってる。急いで食堂に行く。チラホラと剣士や魔法使いがいる。周りで起こして回るドアの音。みんな疲れていて起きれないんだろう。



「大丈夫だったか?」

 開口一番に聞く。明らかに疲れてる。ジュジュまで。すごい戦いだったんだろう。

「うん。大丈夫。リンがエビに足を切られて、ツバキも腕を貝にやられたんで浄化したから、ちょっと疲れただけ」

 ジュジュが答える。

「リン! ツバキ!」

 二人を見る。もちろんジュジュの治癒だ傷跡はない。

「大丈夫だよ」

「私も大丈夫。ジュジュにちゃんと浄化してもらったし」

「そうか」

 まあ、ジュジュが治したなら大丈夫だろう。

「トオルも気をつけてよ。数が多いし。なんか変わったのも出てきて」

「そうか。気をつけるよ。みんなしっかり休めよ」



 あー! 昨日のことは軽い襲撃だった! 今夜はあり得ないほど魔物が湧いてくる。地雷切りをいくら繰り出しても湧いてくる魔物。こういう事か魔物ウジャウジャとは! いや、まだそこには行ってない。海……怖い。




 ヘロヘロになってもう持ち場のようになった場所に座り込む。魔物の襲撃が少し止んだ。体を少しでも休める。

 予想していた船旅とは全く違う。疲れた体を見てここ数日の間にこの重いつるぎを振り回していたせいか、筋肉がさらにはついたように見える。確かにつるぎを軽く感じてる。

 船旅が修行の旅とはな。船長が到着は明日の夕方だと言っていた。今夜までだ。今夜までの地雷切りだな。




「魔物! 群れに突っ込んでる!」




 おし! 行くか!!

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