第20話 お買い物

服の破れにツバキとリンが騒ぎ出しジュジュが慌てて来たが、服をめくって傷がないと言わないと納得してくれなかった。まあ、毒が回るまで動いた後だから信用出来ないんだろうけど。朝っぱらから女の子の前で上半身裸になってる俺をチラ見してく剣士や魔法使い。ああ、今後誰も俺と話をしてくれなくなるって。まあ、これでやっと騒ぎはおさまったんだけど。

「トオル何してるの?」

ってニタ聞くなよ。いや、聞いてくれ、この事態を説明させてくれ!

「夜担当者は早く飯喰って寝ろ!」

えー! 船長、説明が……もういいや。さすがにさっきのでクタクタだ。ニタはいい風に思ってくれるだろう。ポジティブだし。

「じゃあ、俺もう行くから」

「おやすみ、トオル」

声揃ってるよ、四人で。なんかいいよな。俺だけ別行動だし。



あー。今日もベットが俺を呼んでる。吸い込まれるように横になり、あっという間に眠る。





目が覚めたら夕方になっていた。まあ、いつもの事なんだけど。一応興味があるんで窓の外を見る、お! 動いてるが岸が街が見えた。大きな街だな。きっとあの三人張り切って買ってんだろうな、服を。

ああ、感想だよ。考えとかないと、詰まると拗ねるからな。

トントン

「トオル起きてる?」

リンの声。もう来たよ。まだ考えてないのに!

「ああ」

って、早い! 部屋の扉を開けて四人が入って来た。って、ニタお前ここの部屋だろ。なに一緒にノックで入って来るんだよ。



はい。では解説。

ジュジュは妖精っぽさに磨きがかかってる。ワザと? ワザと、バラしてるの? ファンタジー色が濃くなってるが、なぜそんな服があるんだ。

そして……リン。目指してたの猫耳だったよね? なぜにピンクのメイド服を着てるんだ。ってか、これこそなんで売ってるんだよ。いや、そりゃあ可愛いんだけどね。でも、魔王倒しに行く気ないでしょ? 完全に。

はあー。ツバキはやっぱり勘違いをしている。露出が増えてるし。もはや忍者の面影なし。どちらかというと……踊り子。ツバキのスタイルはグラマーというよりもスレンダーだ。体のライン丸出しのスレンダーな踊り子だね。

で、なんでかニタまで衣装が変わってるんだが。ニタは嬉しそうに服とツバキを見比べてる。きっとツバキに勧められて買ったんだろう。しかし、以前の魔法使いって感じの服から……ただの高校生だな。私服だよ。魔法使いそうにない。

何だこれは! ああ、みんなで見てるよ。言ってくれって見てる。って、ニタもかよ!

「ジュジュ可愛いな。その裾のヒラヒラとか」

「そう!」

あ、嬉しそうにしてる。良かった。

「リンは、あの、可愛いよ。ただなんでエプロンがいるんだ?」

やっぱり聞きたい。なぜにメイド服なのかを!

「ほら、汚れちゃうでしょ? 魔物倒すのに。だから。」

いや、魔物倒す服じゃない。

「ああ、そうだね。汚れるしな。だけど、動きにくくないのか?」

どうしても着替えて欲しい! 可愛いんだけどね。でも、戦闘には向かないでしょ。ジュジュは戦闘しないからいいんだけどな。いや、それよりメイド服を却下したい!

「私魔法使うんだから動かないよ!」

あ、ああ。終わっちゃたよ話。

次は難関のツバキ。

「ツバキあのそれは……」

「ん?」

やっぱり無理だ。褒めるしかない。

「あの可愛いよ。うん。」

もう言葉がない。

あー。見つめるな! お前までが! なんでニタのフォローがいるんだよ。

「ああ、ニタ何か新鮮だな」

「そうなんだ! ツバキが選んでくれたんだ!」

ああ、俺の言葉じゃなくて、それを言いたかっただけかよ。

「はい。トオル。トオルの分も」

「ほら破れちゃったでしょ」

「動きやすいぞ! はい」

破れたのは一着なんだけど目の前には三袋。三着あるよな。当然。

ああ、それでか! ニタが自分から服を買うなんて、変だと思ったら、これを選んでてツバキの一言に乗せられたんだな。

「ありがとう。見ていい?」

すごく気になる中身。すぐ知りたい!

「いいよ」

「早く見て見て」

「うん。いいぞ」

どうしようか。受け取ってみたが、嫌な予感しかしないぞ。

でも、やっぱり気になる。一つずつ開ける。一袋目はファンタジーだ。が、まだ着れる。良かった。これはジュジュだな、きっと。

二袋目を開ける。きっとリンだな。なんだろう理想の勇者像なんだろうな。何とも言い難いご主人様感があるが、着れるのか? いや、着なくちゃいけないんだろうな。リンの視線が痛い。

うう、最後はツバキだ。どうしようか、すごい露出の服だったら。着れない。でも、着ないと怒るよなこれ。ああ、怖い! と思いつつ平気な顔を作って袋を開ける。え? 意外に普通の服だった。今まで着てたのより田舎者感がなくなってる感じの服。これが一番着たいが、全部着ないとダメだろうな。心の乱れを隠しつつお礼を言う。なんでいつもこんなに気を使ってるんだ俺!

「ありがとう。大事に着るよ」

大事にで着る頻度の回数を下げたんだけど伝わってるのか?

「トオル。バンバン着てね!」

「もう毎日着てもいいから」

「戦闘にはこれじゃないとな」

撃沈。ダメだ伝わってないか。伝わったからダメだししたのか。

すでに目の前にいるメンバーがこの有様だ。もう船内で俺が何着ても一緒か。

船の中でほとんど交代での毎日だが、船が着いたら一緒に歩くんだよな。っていうか、また街に着くんだよな? そこでも買い物するんだろうな。もっと過激になったらどうしようか。すでにリンは目標に着地してるように見えるがこの上があるのか?





とりあえずまだ、戦闘態勢だからと四人は甲板に向かっていった。なぜかジュジュもツバキとリンが両脇を抱えるように連れて行かれた。まあ、いいか。

さあて、着ないとな。まずは無難なツバキのから。

なんでこんな変な集団になったんだ。妖精にメイドに踊り子に高校生で俺。どう見ても勇者一行じゃないな。





ご飯を食べて交代だけど、ツバキめっちゃまわりに見られてるよ。ああ、注意したい。なぜニタは平気なんだ。まあ、ニタの意見はツバキにサラッと流されるんだろうけど。ここから見てると異様な団体だな。せめてリンのメイドはどうにかしたかった。なぜメイド服を売ってるのか疑問だらけだがもう着ている。今更だな。次の街での買い物には是非参加しないと。どんどん変な方向に向かっていく!

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