第19話 ヌメヌメ
「おう! 坊主! 明日は水と食糧を補給する為に街に寄るからな。まあ、お前は寝てるだろうが」
ああ、そうだろう。寝てるよぐっすり。まあ、街に用もないからな。起きてたらまた、あの三人の目が怖いからちょうどいい。
「どの辺の街なんですか?」
一応どこまで進んでるのか知りたい。船なんで速度わからないし。あれ? この船なにで動いてるんだ?
「おう。ちょっと待ってろ」
ガサゴソ、船長がポケットを探ってる。地図が出てきた。ちょっとシワがすごいが、この扱いだしな。
「えー。あ、ここだよ」
意外にももうすでに半分来ている。この船がすごい速いのか。世界が小さいのか。
「船速いですね。あの動かしてるのって」
「俺だよ。魔法で動かしてるからな。手漕ぎよりも遥かに速いし正確だ」
だろうな。やっぱり魔法の国だな。ってかこの船長めちゃくちゃ魔法使ってるのになぜに戦いは剣なんだ。
「あの、戦闘用の魔法持ってないんですか?」
思わず聞いてしまう。
「ああ、持ってるが。戦いは剣だろう!」
船長はそう言って俺の肩を組む。俺も剣だからか。ああ、船長の戦いに対するこだわりなんだな。ただの。
羨ましい限りの船長の能力だけど、冒険者的性格は全くもって残念だ。
*
それからも、もちろん魔物の襲撃は続いた。新種は来なかったけど移動と共に変わるかもしれないな。なにせ先の先は魔物がウジャウジャ過ぎて船が通れないんだから。この今のこの状態を魔物がウジャウジャと言わないんだから、考えただけでウンザリする。きっとキリなく魔物が這い上がって来るんだろうな。
一文字も何度も繰り出す。リンが見たかったのはこれだよな。だけど、戦闘は大惨事になってる。リンがいなくてよかった。また、船の上からサメを放り投げて海に落とす。サメ、ヤバイよやっぱり前出てるぶん距離あると思ってたら噛まれる。何度か服を噛みちぎられた。服だけで済んだけど。
*
ようやく朝が来る。やっぱり魔物がウジャウジャな海に少しずつだが近づいてるんだと実感する。体が痛いよ。まあ、魔物を海に投げ込んで甲板の掃除も含めての疲労だけど。
交代までに魔物の襲撃来るな。って思ったら来るのか?
「魔物ー! 左!」
なんか夜警めんどくさくなってる? 短い呼びかけになってるのは俺の気のせいか?
とにかく左側へと向かう。うわー。ワカメ? コンブ? って奴らだよ。ヌメヌメ感がイカのさらに上を行く。魔物め絶対船に乗せないからな!!
あとの掃除をイメージしたら、疲れた体に闘志が湧く。魔物は切れ味イマイチだけど、まあ倒れて落ちていくしな。やった感ない魔物だよ。本当。
意外と多い、いや、なんだこの量は! どんどん魔物が海から湧いてくる! 紫色の煙が半端なく湧いてる。
「応援呼べ!」
船長の声が飛ぶ。もう、昼番のみんなが起きてるし交代間近だからな。
ドタドタと足音が聞こえる。助かった。って安堵してられない。一文字で切りまくる。
「トオル!」
振り向けないし、リン、一文字見たかったからだろ? ああ、見てないで丸を落としてくれー!
後ろから呪文。丸が降って魔物が海に落ちていく。俺は少しずれてリンに持ち場を譲る。もうさばききれない数になっていたところだった。
リンの反対側にツバキが来てくれる。俺が一番端だったんで、いつ横から登られるか気が気じゃなかったんだ。これで、魔物の登り口は塞いだ。船には絶対乗せないからな! ヌメヌメ! あ、魔物め!
ハアハア
何匹の魔物を海に落としたんだかわからない。本当にこの海を魔物がウジャウジャと言わないのか? まだ半分なのに。先が怖い。
ようやく魔物の襲撃は終わった。みんな気持ちは同じだったのか、甲板は綺麗だった。ヌメヌメは避けれた。
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