第14話 魔術師
魔術師、時間かかりすぎだろ? 次の魔物の襲撃までに間に合うのか? ただでさえ人数が少ないのに! 怪我治療中の俺が言えないんだけど。
だんだんと体が軽くなる。そろそろ動けるか? 少し体を動かしたら、両側からリンとツバキに押さえられた。まだ顔色が悪いんだろう。
「トオル、ジュジュがいいって言うまで動いたらだめだよ!」
「もう少しだから、我慢してトオル」
俺の焦りが一番わかるジュジュの言葉。
「ああ。わかった」
諦めよう。無理に参加しても足でまといになって、迷惑だろう。ちやんと戦力になるまでこのまま我慢だ。
*
次の襲撃にも俺は間に合わなかった。イカめ! なんてことしてくれたんだ。そして剣士も。治療は終わったが安静にと言って魔術師は自分の部屋に消えた。ええ? 完治じゃないの?
船長の判断で剣士は自分の部屋に行った。今晩は戦闘不可と判断された。フェアリーってマジですごいんだな。はじめからフェアリーだったんで、ありがたみがわからなかったよ。ジュジュがいて良かった。ジュジュがいないと俺マジで死んでたな。
それで魔術師こっちをやたらに見てたんだな。魔術師の枠を超えてるんだな、フェアリーの力。
*
戦闘は左側で行われている。見えるんでまだ安心って訳にはいかない。見えたら見えたでヒヤヒヤする。特に接近戦のツバキはハラハラしながら見る。見てるだけの俺。情けない。
と、ツバキ!!
「後ろだ! ツバキ!」
声をあげてなんとか立ち上がる。が、遅かった。ツバキが振り向いた途端にエビに切られた。俺は足を引きずりツバキの元に行き、抱きかかえ運ぼうとするけど、ダメだ力が足りない。すっと横から手が伸びる。ジュジュだ。
「行くぞ!」
二人でツバキを戦闘から外して安全な場所に運ぶ。
ツバキは足を切られていた。
「ジュジュ頼む」
「うん」
ジュジュは手をツバキの足の傷口へと当てる。ツバキは太ももを思いっきり切られてる。普通ならこんなの治らないだろう。ツバキは苦しそうだ。
みるみる傷が閉じていく。俺の傷もこんなふうになったのか。
ツバキ顔色がよくなっていく。フェアリーってやっぱりすごい。
さっきのエビはすぐに船長に切られている。俺をやったイカも船長が切ったのかな。
魔物のあげる叫び声と水の音がまだ続いてる。エビの叫び声? こんな時に魔物の納得できないとこを考えるのはやめよう。
エビとの死闘は叫び声と水の音で終わった。甲板まで這い上がってきた魔物の始末をさっきの船乗りと船長がしている。魔物を海へ投げ捨てた後甲板を掃除している。甲板が魔物の体液で紫色になってるからだ。意外にアッサリと紫色が消えて行く。
それにしても船長タフだな。戦闘直後なのに。
さっき動いてあともう少しだとわかったら少し気持ちが落ち着いた。ツバキも大丈夫そうだし。
戻って来たリンも心配そうにツバキを見て近づいてくる。
「はい。これで大丈夫。ツバキ、大丈夫?」
「うん。ありがとう。ジュジュ。もう痛みもない」
「良かったー」
リンがツバキに抱きついてる。戦闘中だったから心配でもこちらを見れないし気が気じゃなかったんだろう。
「リン、もう大丈夫だって!」
微笑ましい光景だと見ていたら左腕を取られた。ジュジュが治癒をはじめた。今度は座って治癒を受ける。寝てと言われたけど座れるんだし、膝枕を魔法使いや剣士に見られてるのは恥ずかしい。剣士はそこに転がされてたのに、俺は膝枕って、と思ってたんだよな。
座れるようになった。次の魔物の襲撃には間に合うかな。
*
「魔物だー! 右側!」
おし! やってやる。
*
さっきジュジュの治癒が終わった。
「はい。これで終わりだよ。トオル」
「ありがとう。ジュジュ」
心からそう思ってるよ。ジュジュじゃなきゃ死んでただろうし、もう復活できるんだから。
ジュジュ疲れてるみたいだな。ちょっと疲れが顔に出てる。ずっと治癒しっぱなしだったし、寝てないしな。
「ありがとう。リンもツバキも。三人とももう寝てくれよな。そんなに寝れないかもしれないけど」
これでやっと戦える。魔物から逃げていたけど、目の前で戦ってるのに手を出せないのは嫌だ。サメだろうがイカだろうが貝だろうが来い! いや、来ないなら来ないで。
って、なんでまだいるんだよ。ジュジュもリンもツバキも!
「おい。部屋に行けって。明日もあるんだぞ。早く寝ろって」
「うん。わかった」
渋々言うリン。
「また、何かあったら呼んでよ」
「ああ」
ジュジュ、また何かあったらって嫌な話なんだけど。しかも呼ぶの船乗りが行くんだけど。
「じゃあ、お休み」
と、ツバキも動いてくれた。はあ、これで安全だ。さっきはハラハラ、ドキドキで、さらにはツバキがやられて焦ったけど。エビって下からも攻撃くるんだな。俺も気をつけよう。
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