第15話 復活!

 って、事で俺、復活!!



 今度は最初のサメだな。登ってくる手ごと切りたいが船を傷つけたら船長に怒られそうだ。

魔物の体が船より上に出てきたら即斬りつける。あの魔物の牙は最悪な結果を生むこと間違いなしだろう。

ああ、なんでこのつるぎはこんなに重くて大きいんだよ。振り回す度に体が痛い。休んでいたけど、昼間の疲労は溜まってる。が、弱音吐いてる場合じゃない。ザックザクと切り裂いて海へと落として行く。



 なんとか魔物の群れの襲撃が終わった。



 *



 息をつき、その場に座る。疲労は並じゃない。あの休憩なかったらどうなってたんだ俺。

 と、俺の横に船長が座る。今回は乗り込んできた魔物はいなかったので掃除はない。

「お前勇者だったのか」

 知らずに乗せたのか。冒険者だなこの船長。

「あ、はい。」

「その剣、勇者のつるぎだろ?」

 これでわかるんだよな。勇者って。って、伝わり過ぎだろ勇者伝説。なんで俺だけ知らないんだ。

「はい。村を出る時にもらって」

「凄いな。魔物を真っ二つってのは。だけど大きいから大振りになるな」

「そうなんです。だから、疲労も凄くて」

 言い訳じゃない。本当のことだ。

「それって切れ味いいんだろ? そんなに振り回さなくても十分に切れるんじゃないのか?」

「あ」

 確かに。手応えもほとんどなく切れる。気合入れて振り回してたけど確かにそんなに力いらないかも。もちろんこの重さを振り回すだけでも体力使うけど。

「もう少し小振りに振ってみたらどうだ?」

「はい。やってみます!」

 おお! このつるぎを小振りに振るのは難しそうだが、できるだけ体力を使わずにやってみよう。いいこと聞いたさすが船長だ。

「しかし、お前、勇者の割に謙虚だな」

「え!?」

「勇者ってかなり乱暴者で書かれてるから、歴代の勇者とお前は違ってるんだな」

 歴代の勇者? 俺だけじゃないの? 勇者って今までにもいたのか?

「あの、勇者って今までにもいたんですか?」

「なんだ。知らないのか?」

「はい。是非教えてください」

 もうめちゃくちゃ下から聞くよ。

「どっちが先かはわからないが、何百年に一度魔王が現れると勇者も現れる。勇者は少年なんで鍛えて10年後に魔王を倒す為に旅立つんだ。魔王も最初は小さな影響しか与えないが、勇者が旅立つ頃には、まあ、今みたいになってるんだ」

 なぜだ。もっと早く行けば道のりもいいのに。試練なのか? 修行なのか?

「それがずっと続いてると」

「ああ、歴代の勇者伝説が残っているが、お前の前の勇者は凄いぞ。もう魔王かってぐらいに」

 わからない。なぜ勇者が魔王に見えるんだ。それ程の乱暴者、いやそれでは片付けられない。

「凄いですね」

 もう言葉が出ないよ。今回は完全な人選ミスだろ! 転生させた奴、間違ってるって。俺の要素に乱暴者は含まれない。

「ああ、だがお前かあ」

 ああ、船長も不安に思ってるよ。だろうね。俺でも思うよ。この世界の平和がかかってるんだよな。

「すみません」

 勝手に転生されて任命されてるだけだけど、なぜか謝ってしまう俺。

「いや、そういう勇者もいいんじゃないか」

 やっぱり、この人冒険者だね。ポジティブだよ。恐れてないね魔王倒すの失敗する俺、勇者を。



 *



 さて、なんだろう。凄い眠い。時間的にも体力的にもかなり限界きてるもんな。夜警の声がするまで仮眠ぐらいいいかな。なんか周りも靄がかかってきて眠りにどんどん誘われてく。



 その時、夜警の声ではなく鐘の音が響く。かなり大きな音だ。そう言えばなんでこんな大きな鐘がこんなところにあるんだと、船内で働いている時に思った。大きいからかなり大きな邪魔物だった。甲板の先端に設置してあるもののかなり邪魔だった。



 鐘の音で一気に目が覚める。

「セイレーンが出たぞ! 気をつけろ眠ったら連れていかれるぞ!」

 この鐘の音を聞いて今の発言聞いたら眠れるか!

「来たぞ! 右前方!」

 夜警の声だ。




 みんなは走りよらない? え? 少し手前で待機してる。ええ? セイレーンは魔物じゃないの?

 何時の間にか呼ばれたのか、さっきの魔術師が俺たちの先頭に立った。え? 魔術師?

 ザバッて大音量な水音と共に、相手にならない大きさの人魚もどきがあらわれた。なんだか残念だよ。半身半魚なんだけどさ。いや、割合が違ってる。足は魚で体が人なんだけど、顔がまた魚……ジュゴンっぽい。とても魅力のあるセイレーンではなかった。さっきから聞こえてくるこの綺麗な歌声もぶち壊しだな、これじゃあ。


 でも、大きさは半端じゃない。車いやトラックはあるね大型の。しかもなぜか浮いている。ふわふわと。

 魔術師が呪文を唱え魔石で作ったらしい数珠状のものを握りしめている。大丈夫なのか? さっきの剣士が思い浮かぶ。この魔術師じゃあ、完治してなかったけど。魔法使いじゃダメなのか?

 ちっとも効いてるように見えないがジュゴンいや、セイレーンはふわふわ浮いたままそこいる。もちろん船は動いてるからセイレーンも一緒に動いているんだろう。

 動きのない緊迫した試合を見ているようだ。ジュゴンの顔が緊迫を俺から奪おうとするがみんなは緊張している。相当な敵なんだろう。どうなるんだ? これから?




 気がつくと歌がやんでいる。霧も徐々に晴れて行く。

 バシャバシャ

 といや、もっと大きい音だ、がして船体を大きく揺らしてジュゴンは、いや、セイレーンは海中に去って行った。



 何だったんだよ!




 船長に聞くしかない。こんなモヤモヤは嫌だ。

「あの、ジュ、いや、セイレーンに何をしたんですか? セイレーンって魔物じゃないですよね?」

 そう、そうなんだ! セイレーンからあの紫色の煙は出てなかった。

「ああ、聞いたこともないんだな。セイレーンは魔物じゃない。ずっと昔から海にいるんだ。時々出てきては眠らせた者を連れ去るんだ。どこに行くかはわかってないが、まあ、死んでるんだろうけどな」

 簡単に言うね。ってか先に言っててくれよ! 危うく寝るとこだったじゃないか! なんてことは言えずに。

「魔術師は何をしてたんです? 魔術師って医療専門だと思ってたんですけど」

「魔術師は治癒の力をセイレーンに注いでいたんだ。なぜかはわからないがそうすると帰ってくれるんだ。今までにも剣士や魔法使いがいろいろとやったが全く効果がなかった。多くの船が沈められたのか、さらわれたのか。ボロボロになって帰ってくる船も多かった。ところが怖さのあまりに船に乗ってた魔術師が治癒の魔法を使ったらはじめて効果があったんだ。そこからは、眠り防止の鐘と魔術師で安全になったけどな」

 ジュゴン、いやセイレーン怪我してるのか? じゃあ、なんで人を連れていくんだー! 異世界恐るべし。ってジュジュがやったならあっという間にセイレーンは帰って行ってた?



 *



 それからも眠りにつく前に魔物の襲撃に合う。俺は船長に言われたやり方でやってみた。最初は力加減がわからなかったが、戦いをこなして行くうちに、コツをつかんでいった。体力の消耗が少なくなってる。船長ありがとう!

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