第38話 再会1

体が重たい。何かに縛られているかのように重たい。だけど、ここから抜け出さないとマズイ。なんでか分からないけど、非常にマズイ気がする。だけど、そう思えば思うほど体は重くなっていき、縛っている力も強くなっていく。

抜けれない。抜け出せない。

そうか。俺はこのまま、永遠に抜け出せないまま死ぬのか……

そんなのは嫌だ……自分の死に場所ぐらい自分で選びたい……だけど、それを叶えるのは無理だろうな……

でも、それでも、今はこの力から抜け出す。俺自身の手で……




「んっ……」

目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。

「ここって……」

「すぅ……すぅ……」

寝息のする方を見てみると、沙っちゃんがベットに持たれかかって寝ている。

それから、周りを見渡すと、見覚えのある部屋だった。と言うか、ここは完全に、

「俺の部屋か……」

一体、どのぐらい寝ていたのだろうか。そう思い、ケータイを見てみると、8月のお盆が終わっていた。

「半月以上も俺は寝てたのか……?」

その割には、色々とおかしな点がある。

まず、我妻家に居た頃よりも、少し筋肉が付いている気がする。もちろん、勘違いの可能性があるが、多分そうだと思う。

次に、本の並び方が見知らぬ並び方になっている。俺の並べ方は、各作者様を50音順で並べ、シリーズもきちんと刊行順に並べてある。それは、沙っちゃんも、母も知ってる事だから、もしかしたら我妻聡夫がやったのかもしれない。

と言うか、俺が寝ていると思っていた半月以上で我妻聡夫が覚醒していたのか。それなら、納得出来る。

「あれ……剣君?それとも、聡夫君?」

その呼び方って事は……

「そっか。記憶戻ったんだね……沙っちゃん」

良かった。本当に良かった。沙っちゃんの記憶に関しては、どうするか決めてなかったから、戻っているなら、俺は何もしなくて良いだろう。

「うん。ただいま、剣君。そして、おかえり、剣君」

「おかえり、沙っちゃん。それから、ただいま、沙っちゃん」




「へぇ〜。じゃあ、家族の問題も聡夫が片付けたの?」

「うん。見事にね。ぱっぱと片付けてくれた。本当に早くね」

なんか、聡夫に嫉妬してしまう。同じ体なのに。

「そうそう。聡夫君から手紙があるんだった。剣君に直接渡してほしいって言ってたんだけど……読む?」

「いや、後で読むよ」

だって、今は沙っちゃんと出来るだけ話していたいから。

「そう。それじゃあ、先にやる事済ましとこうか」

「やる事?」

「うん。美桜ちゃんに電話しないと」

あ〜。そう言えば、聡夫がケンカ原因で追い出したんだっけ。

「分かった。かけてみる」

『ただいま、電話に出ることが出来ません。ピーっという音の後にお名前とご要件をお話ください』

「だめだ。留守電に入っちゃった」

「そっか。なら、仕方ないね」

仕方ない。うん。そのはず……

「取り敢えず、奏さんに起きた事報告しに行こうか」

「そだね」

そう言って、俺達は母に会いに行った。

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