第6話 反撃ロボッツ

「衝撃ニヨリ、当機ニ不具合発生。速ヤカニ復旧ニ入ル」

「こんな時に……」

 私は焦った。どう見ても危ない状況の中で、ロボットが復旧に入ったのだから。

「ぐっ!」

 いきなり衝撃がロボットと私を襲う。機体は大きく揺れ、危うく倒れそうになった。

 正体を確認したい私であったが、復旧に入っているためか、モニターが砂嵐になっていた。素晴らしいぐらいピンチだった。

「どうにかして状況を確認できないものなのか」

 私は考えた。考えに考えた。とても考えた。しかし、さっきから押してくれと言わんばかりにピカピカと光る赤いスイッチが気になり、解決案が思いつかない。そんな時、やってみなければ分からないというトンデモ案が、頭の中に浮かんできた。

 私はスイッチを押した。


「当機ハ1分後ニ爆発スル。速ヤカニ退避セヨ」


 ロボットからアナウンスされると、部屋のあちこちに赤いランプが出てきて、激しく点滅する。死亡フラグが舞い降りた瞬間だった。

「何でわざわざ点滅させたんだ……。というか、この状況かなりヤバいのでは……。」

 私は何とかしてこの状況を変えるため、他のスイッチをテキトーに押す。が、ろくでもないスイッチだらけだった。たらい落とし、水かけ、椅子回し、3時のおやつの時間を教えるボイス、落語中継など、いらない機能だらけだった。


「残リ30秒」


 ロボットから残り時間がアナウンスされた。いよいよ自分との別れが刻一刻とせまる。外からは、何かを切断する音が聞こえ、ますます厳しい状況、大ピンチになっていた。このロボットももう長くはないのだろう。私はその時を静かに待つ。


「10秒前……9……8……7……――」


 ロボットは最後のカウントダウンを始める。そして、私は人生を振り返る。

 私の最期は、何だか忙しかったな。機動隊に捕らえられ、ロボットが空から降ってきて、隊長は燃えて、ロボットに強要を迫られ、よく分からないカオスな状況になった。はあ、これが人生最後なのだとしたら黒猫少女のDVDを見ておきたかった。

 私は別れを自分と世界にし、目をつぶる。


「――……2……1……システム復旧。直チニ攻撃ニ移ル」


 最後が迫りに迫ったその時。復旧が終わった。部屋のいたるところから顔を出していた赤いランプは首を引っ込め、部屋は久々に明るくなった。モニターには、外の状況がロボット視点で映し出されている。

「あれは……」

 外には機動隊が予め仕組んでいたのだろうと思われる、全自動装甲兵器「CANCER」がロボットの左腕を持っていたのだ。やはり切断されていたか……。

「コレヨリ戦闘ニ移ル」

 ロボットはそう言うと、CANCERの目の前に立ち、右腕を構える。

 反撃が、これから始まる――。

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