第3話 守りたいのは


手に持つコップを、ミリアニの持つトレーに、すっと返す。


ふわり、と、ミリアニと彼女の祖父の前に、立つ。


ダラリと両手をさげ、軽く膝をまげる。


視線は、一点を見詰めずに、焦点を定めない。


これで視界は広がり、左右の兵士のわずかな動きにも、反応出来る。


「ぬ!」


兵士の数人は、俺が反撃の構えに備えた事に、気が付いた様だ。


「ちょ!ちょっとお待ち下さい!私の父の手勢にて、御座います!」

ミリアニが、慌てて説明して来る。


「おう!そうですか!それは、失礼致しました」

俺は言うなり半歩下がり、両膝を付いて正座に座り、まとった戦意を解く。


兵士達も、兜の奥で、緊張が解けたのがわかる。


「そのまま捕縛せよ」


テントに入りながら、偉丈夫な男性が、慣れた口調で兵士に命ずる。


え?


兵士達は、戦意が無い俺を見て、一瞬とまどう。


が、目の前の三人が、縄を取り出す。


目の前の兵士達が、ミリアニとその祖父への害意が無いのなら、俺はどう言う扱いを受け様と、特に依存は無い。


俺は両手を、縛られやすい様に後ろ手に回し、縄を待つ。


「し……失礼致します」


そんな俺の所作に、縄を持つ兵士は戸惑いながら、一歩近付く。


「待て」


ミリアニの祖父が、急に立ち上がる。


われの客人に、無礼は許さぬ」


「「「え?」」」全員が、固まる。


「……父上。今朝救護したばかりの御仁ごじんを、客人と言うには、なかなか無理がありますぞ」

偉丈夫な男性は、不機嫌な表情で、父親に抗議する。


もっともな意見だと、捕縛されそうな、俺も思うよ。

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忘れた男☆にザワつく異世界 円鐘 眺 @manmaru44

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