第2話 かわいい♪



「……ま、まぁ。ヌシの発見された状況をかんがみれば、頭部を強く打ったかも知れぬしの!」


ミリアニの祖父?は、俺が余りにも某然ぼうぜんとしている様子に、気を使ってくれたのか、記憶喪失の理由の予想を言う。


「発見された?……状況?とは?」俺は思わず、聞き返す。


「昨夜、近くの森に『星降り』があったのじゃ」


数え切れない星がまたたく夜空を切り裂く様に、強く輝く流星が、落ちて来る。


キューン!!


ドカンッ!!


丑三つ時じゃったが、凄まじい落下音と爆発音に、キャンプ人員全員が跳び起きたぞ。


落下地点と思われる山森の奥が、ほのかに明るい。それは木々が燃え始めた兆候である。

その山森は水源でもあるので、山火事が拡がるのを防がねばならん。

我らは慌てて、総出で消火に向かったのじゃ。


そうして落下地点に向かえば、ほど近い場所に、ヌシが仰向け大の字に、のびて居るのを見付けたと言う訳じゃ。


それでは俺は、年配男性の善意に、助けられたと言う訳だ。


「あ、ありがとうございます」


俺は寝床の上に正座になおり、素直に頭を下げ、礼を述べる。


「ほう。若いのに、慎み礼の精神を知るか。良いことである」ミリアニの祖父?は、感心しきりに、うんうんとうなずく。


「おう、そうだ。もう大丈夫そうだが、『癒し水』を飲んでおけ。ミリアニ、差し上げるが良い」ミリアニの祖父?は、俺を心配そうにうかがう彼女に、俺の世話を促してくれる。


へへぇ!御配慮ごはいりょ、ありがたいです!

俺は内心、ミリアニ祖父に『グッジョブ!』を付ける。


「その……御加減おかげんは、大丈夫ですか?」ミリアニは小首をかしげ、コップを俺に手渡してくれる。


うああぁ。最強に、かわいい♪


むき卵の様に、すべすべの白いほほ

パッチリと大きい目の、硝子ガラスの様に綺麗な碧眼は、心配そうに俺を見てくれている。

卵の様な良い形の小さい頭に、山吹色の金髪が、優雅に巻いている。

たおやかな彼女の身体のラインは、ゆったりとした衣装なのに、隠し切れないメリハリある破壊力があり、存在感有る(たゆん♪)に視線が行かない様にするには、強固な意志が必須である。


天使の様に、クオリティー高い美少女だなぁ♪


俺は彼女の心配そうな表情に、思わず、ぱぁっと、笑顔を返す。


「ありがとうございます。御陰様おかげさまで、痛みは治まって来ました」正座のまま、コップを、かまえる。


ぼん


なぜか、彼女の白い肌は急に、紅く上気する。


「しょ、そ、そそそれは、良いきょとで、ぎょざいました」


なぜか、彼女は綺麗な笑顔を引きつらせ、カミカミになる。


そして、紅い顔をなるべく伏せて、水差しを差し出して来る。


近付いた彼女から、良い香りがして、鼻をくすぐる。


ふと、こぼれそうな予感に襲われた俺は、こちらから水差しの注ぎ口に、コップで迎えに行く。


「あ、ありがとうございます」


彼女は、うつむき加減のまま、『癒し水』?を注いでくれる。


「おっと!ありがとうございます」


勢い良く注がれ、少しコップを上げる。

ストップの合図だ。


「は、はい!」彼女は、慌てて水差しを持ち上げる。


なんだろう?この、御見合いの席の様な、ぎこちなさは。


俺は、コップの中の『癒し水』?の水面を見つめる。


そう言えば、この『癒し水』て、どう言う効能なんだろう?


『癒し水』とハ、この地方のサキレの実を絞った果実水デ、スポーツドリンクの様な効能でス。


急にまた、合成音ぽい声が脳内に響き、俺の動きは固まる。

視線だけ、左右にキョトキョト動かし、周囲を伺う。

……多分、周囲二人の様子から、俺の脳内だけで聞こえる声だよね。


俺の脳内に響く声の君は、誰だい?


と、頭の中で、念じて見る。


……答えは、帰って来ない。


おい!


「どうしたかの?」


彼女の祖父?が、固まった俺に、心配そうに声を掛けて来る。


「え?あ!……何でもありません!」


ごくり


慌てて『癒し水』を、一口飲む。


爽やかなライムの様な香りが鼻を通り、程良い酸味とほのかな甘みが、喉を通り過ぎて行く。


「うまい!」思わず破顔一笑はがんいっしょうする。


ごくごくごく


一気飲みすれば、爽やかな喉越しが、通り過ぎて行く。


「はぁ。美味しいですね!」笑顔を、彼女に向ける。


「良かった♪お代わりは如何いかが?」

彼女は、とびきりの笑顔で、返してくれる。


彼女は、俺が飲んでいる間に、気持ちの体勢をととのえた様だ。


「いただきます」遠慮無く、コップを差し出す。


「はい♪」彼女は笑顔のまま、今度は、作法通り優雅に注いでくれる。


「ありがとうございます」ピタリと程良い量を、注いでくれた。


「はい♪」笑顔で見つめ合う。


ドドドドドドドドドドド!


ブヒィン!


急に多馬たとう分の、駆けるひづめの音が聞こえたかと思うと、テントの外をぐるりと囲むように止まる。


ドカドカドカドカ!


バサバサ!


あっと言う間に全身甲冑の完全武装兵士が、テントの中に入り込み、三人を取り囲む。


俺は、注いでくれたコップを持ったまま、某然と固まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る