決めました。

「なぁ、知ってるか? この町に例の冒険者パーティーが来るんだってさ」

「例のって?」

「あれだよ。黒魔法を自在に操る黒魔法使いに、先日正式に属性騎士に任命された白騎士、そして斧殴りのミャーの三人だ」

「あぁ、あの三人か。近頃結構噂訊くよね」

「そうだな。最初はトラストの町に来襲した魔王軍幹部と戦い、リーダーの斧殴りが幹部の顔面を陥没させたってのが広まったな」

「次はミーンのダンジョンで異常発生したアンデッドの魔物を相手して、最奥に待ち構えていたリッチーを当時見習いの白騎士が屠ったって話題が上がったよな」

「そうそう。黒魔法使いも、得意とする重力系の黒魔法でコークルの大都市に襲来してきたワイバーンの大群を一匹残さず地面に叩き落としたって逸話もあったな」

「あと、旅の途中神獣フェンリルの幼子を魔王軍の魔の手から守り通し、無事に神獣の里に送り届けたっていう眉唾物の噂も上がったっけ」

「あれは多分本当だろ? フェンリルの幼子を無事に送り届けた事によって、神獣から加護を授かったそうじゃねぇか。それの御蔭で、魔物特攻を得て因縁の魔王軍幹部を倒せたって話だぜ」

「あぁ、その話か。トラストの町に来襲した魔王軍幹部と再び会いまみえ、接戦の末に倒したって言う。その場にいた奴等が言うには、おいそれと手出し出来ない領域の戦いをしていたらしいぜ」

「勇者様のパーティーを除けば、今一番の期待の星だよな」

「そうだな」

「そのパーティーが、今この町に、勇者様のパーティーがいる時期に来るのか」

「彼等にしてみれば、久々の再会になるのかもな」

「トラストの町で一緒に魔物と戦っていたって言うしな。面識があっても可笑しくはないか」

「いやいや、面識があっても可笑しくないんじゃねぇよ。面識はあるんだ。特に、勇者様と斧殴りはな、親密な仲らしい」

「どういう事だ?」

「何でも、トラストの町に来襲した魔王軍幹部との戦いの後、重傷を負った斧殴りが目を覚ますまで片時も離れず、勇者様が付きっきりで世話をしていたって話しらしいぞ」

「マジか」

「そりゃ、決して知らない仲じゃねぇな」

「だろ?」

「っと、噂をすれば勇者様達だ。どうやら無事に魔王軍幹部を倒して来たらしい」

「流石だな。討伐に向かってからまだ一週間も経ってないよな?」

「あぁ。それ程までの力を有しているのさ。俺達じゃ、勇者様が逆立ちしたって勝てっこねぇよ」

「違ぇねぇ」

「ん? 何か更にざわつき始めてねぇか?」

「どうしたんだ?」

「……おっと、もしかしてあれが原因なんじゃねぇか?」

「もしかして、あの三人組は」

「十中八九、あれが黒魔法使いクロウリ・アズサに白騎士レグフト・ウィンザード。それに斧殴りのミャーことウツノミヤ・タクミだろう」

「今話題のパーティーと勇者様のパーティーが会合したか」

「おっと、斧殴りが勇者様に話し掛けたぞ」




「……よっ、久しぶりだな」

「……」

「はは、だんまりか」

「……」

「まぁ、今となってはもう気にしないけどな」

「……」

「なぁ、桐山」

「……」

「俺にも魔王退治手伝うよ」

「……え?」

「漸く声出したよ」

「何で?」

「何でって、俺の為に命張ってる人に任せっきりにするのは、男としてどうかと思う訳だよ。その為に俺は結構大変な思いをして強くなったんだから」

「……そう」

「勿論、それだけじゃないけどさ」

「?」

「まぁ、あれだ。桐山」

「……何?」

「……あ~、何だ。取り敢えず、あれだ。元の世界に戻ったら、一緒に遊びに行こう」

「え?」

「買い物したり、映画観たり、食事したり、な?」

「……それって」

「あー、はい。桐山が思ってる通りです。デートの御誘いです、はい」

「……そう」

「きちんとした事は全部終わってから言うけどさ、それでいいか?」

「……うん」

「と言う訳でだ、桐山」

 俺は息を軽く吸って、真っ直ぐと桐山を見て再度宣言する。

「俺も魔王退治を手伝うから。一緒に元の世界に帰ろうぜ」



 了

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Q.攻撃方法は何ですか? A.卓球です。 島地 雷夢 @shimazi

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