挑戦


休暇で山深い田舎の村に行った。

川に行くと、きれいな水だがドジョウがたくさんいる。

あまりに多くいるので民宿のオヤジに理由を聞いてみた。

なんでも上流に秘密があるらしい。


オヤジの案内で上流へと川をたどる。

ちょっとした山登りだ。

ずいぶん行った頃、誰もこないような山奥で大きな池についた。

その先は切り立った崖で、見事な滝になっている。

池には色とりどりの鯉が、それこそウジャウジャいる。


その光景にしばらく見とれていると、突然一匹の鯉が滝を登り始めた。

すごい勢いでもう少しで滝を上りきる……かに見えたが力尽き落下する。

すると不思議な事に鯉はみるみる小さくなってドジョウになってしまった。

ドジョウはそのまま池から流され、川下に向かって流れていく。


「これは一体……?」

振り返って一緒に見ていたオヤジに聞くと

「伝説では滝を登りきる事ができれば竜になるらしいのですが、私も見た事はありません。挑戦に失敗した鯉はドジョウになって川を流れていくのですよ」

「すると、川にいたドジョウは鯉のなれの果てですか……。一回の失敗も許されないとは」

オヤジがため息をつきながら言った。


「そうですか? 今の日本の社会も似たようなものではないですかね」

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