日常パート

1メイド・イン・ミッちゃん

騒動があって一ヶ月は過ぎただろうか。


 あれからディーラーに報告をし、その後も若干の仮病を使いながらミッちゃんの特別な個人メニューを食べ続けた。

流石に一週間経つと平常メニューに戻され、それと同時に医務室からでた。


 ミッちゃんが俺だけに作ってくれる特別な食事がないなら、こんなつまらない部屋で寝ている意味はない、と。


 特に事件が起きることもなく平和な日常が流れた。

その平和を思う存分、満喫エンジョイしている。


 現に今も自室のベッドに横になったまま起きるのが億劫となり一日中寝ていようとさえ思っていた。

必要最低限の家具しか置いていない部屋。

物が多いとどうも落ち着かない性分だ。


 心地よい眠気とフカフカのベッドに身を任せ、再び眠りにつこうと思っているとドアからノックの音が聞こえた。


「どうぞ。」


 間髪いれずに返事をすると「失礼します。」と言ってゆっくりとドアが開く。

来客者はメイドのアリサさんだった。


 メイドと言っても彼女達は間違いなく、少数派の一員だった。

言ってしまえば、メイドというのはこの館での役割のひとつで主人といった上下関係もない。


 だから、メイドの制服であるメイド服を着せるのは失礼に当たると当初のディーラーと俺は考えていた。


 しかし、試しにとメイド長であるミッちゃんが幾つかメイド服のデザインを考え出すとそれが意外とメイド達に受けた。


 自分達が率先してメイド服を着て、さらには「ご主人様」「お嬢様」と皆を呼びメイドになりきっていた。


 事実、ミッちゃんにより訓練されたメイド軍は絶対的な忠誠心で統一され本物よりも本物らしかった。


 そんなことを横になって考えているといつの間にかアリサさんは部屋に入り目の前に立っていた。

音もなく気配もなしに動くのはそう訓練されたからだ。


 寝ぼけた頭でアリサさんをよく見るとかなりの美人だった。

年と背はミッちゃんと同じで高校生くらいだろうか。

髪はショートでウェーブがかかっており色は淡い青で瞳も同様に青かった。


 無口なのはメイドらしさを出しているのではなく元からだろう。

ミッちゃんデザインのメイド服は黒が多用されており、ロングスカートであるが動きやすく機能的で中々に可愛かった。


 未だに横になったままボーッとしている俺に痺れを切らしたのか、アリサさんが咳払いをする。

慌ててベッドから体を起こした。


「ご主人様、メイド長が裏庭でお呼びです。急用でもないらしいのでご都合が合えば、ですが。」


 どうやら珍しくミッちゃんからご指名を受けたらしい。

あのミッちゃんが?何のようだろうか。

どちらにしても答えは一つだった。


「ああ、わざわざありがとう。もちろん今すぐ行くよ。」


 ベッドから体を起こし上着を羽織って口臭消しにガムを噛みながらアリサさんを尻目に部屋を出た。

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