1.4

私達の「魔法少女」は、一般的なそれとはかけ離れているようだ。

最初にヴェリテの説明を聞いたとき、率直な感想はそんな感じだった。


『力が、欲しくないかい?』


 確か、そんな売り文句だったと思う。


『偉大なる――魔法の力さ』


 ヴェリテの声は急に高い女性の声になったり、野太い男性の声になったりする。老婆の声にも、言葉を覚えたての幼児のような声になりもする。


もっとも、あんずの前――今はあんずの部屋に住み着いているのでほとんどだ――では、頑張って極めて女性の声に近いもので話すようにしてもらっているのだけれど。


『僕らが戦うのは、悪の軍団や魔の帝国なんかじゃない。貴方達には、《霊狩り》をしてもらう』


《霊狩り》。


 要するに、幽霊狩りだ。

『この世界は、死んだもの達の魂であふれかえっている。こちらの処理では、追いつかないくらいに』


『あたしは、《霊狩り》対策室人界××支部の、ヴェリテ』


『俺の、死神になって欲しい』


 そんな風に、黄色いもこもこした生物――ヴェリテは言った。


 そう、死神。

 死をつかさどる者。


 「魔法少女」というよりは、私達がやっていることは《死神》に近い。

 何て言ったって、私達の狙いは、死んだ人間なのだから。


 ヴィリテが現れたとき、最初は断ろうと思った。

でも、そんなことは私にはできなかった。


 力が、欲しくて。

 魔法をねだった。


 その代償として、私は「魔法少女」をやることになった。


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