第5章【魔軍侵攻】2節【突然の大破壊】

炎歴4078年サクラの月始まりの日。

第一級冒険者さいこうきゅうの4人以外は、何も知らないままいつも通り過ごしていた。血のように真っ赤な紅玉桜花ルビー・キルシュの美しい花びらは、今日普段よりもなぜか一層妖しい美しさを宿して見えたぐらいであるが…


       しかし悪夢は、なんの前触れもなくやってきた。


白夜の刻。いきなりシガンシナ西区の城壁にある見張り台から、【敵襲】を告げる鐘の音が音高く打ち鳴らされた。しかし、リミアは追い返したばかりである。

叫び声を聞いてみると、驚きの内容であった。


      「モンスターの大群だあああああああああっ!!!」


「大群?どのくらい?って……はあぁぁぁぁっ!?360度埋め尽くされてるじゃねーか…!!」「とりあえず、迎撃準備急げっ!!」

蒼穹の館にいたギルド構成員20人全員と、ちょうど街にいた冒険者たちは大急ぎでシガンシナ西区正門から街外へ駆け出る。先に出ていたレイナが【解析アナリシス=Ⅹ】で分析した結果を見て一瞬硬直していた。

「みんな…こいつら全部通常格がLV,9以上だし、1体だけLV,40って出たんだけど」

          ((嘘……LV,40って!?))

「しかもモンスター名、あの【漆黒巨龍エリュシオン】って…」

「嘘だろっ…!?あいつらもしかして…伝説の怪物を呼び覚ましたのか!?」

レイナの探知系スキルは都市中でも最高精度である。ゆえに、彼女の【解析アナリシス】結果が誤りであるとは考えられない。

「ねえ、副指揮官コウガさん…あの巨龍、角から何かオーラが出てるけど」

「んんっ?本当だな。あの黒いオーラ…あの時と同じだな。ちょっと見てみるか」

コウガは精神干渉系けいとうがいスキルの1つ、【心鍵の部屋】を使って巨龍の精神こころの中を覗きにかかった。

「なんだこれ、巨龍あのりゅう、苦しんでるのか…?」読み取れたのは、苦しみと憎悪、そして「助けてくれ、出してくれ…」と助けを求める声。

「まさか、闇派閥の奴ら、隷属サーバネーション…」

【隷属】状態にすると、対象を自らの思い通りに操ることができる。

「闇術系魔術スキルに確か、そんなものがあったのはあったけど…LV,40の伝説級怪物さいきょうモンスターを隷属状態にするなんて、相当熟練度が高くないと絶対できないはずなんだが…!?」

4人が刹那の思考を巡らせているその間にも、【隷属サーバネーション】状態の漆黒巨龍エリュシオンは、周囲に破壊と虐殺をまき散らしている。

          「ガアアアアアアアアアッッッ!!」

巨龍あいつの憎悪の根源は、闇派閥の魔術師だな。でもまず巨龍を止めないとどうしようもないぞ」

「精神干渉系の《心鍵の部屋》使ったのね。じゃあ、時間稼ぎに行くわよ!」

レイナが走りながら職業特性【覇眼】と刀術闇術系複合スキル【黒檀の暗夜】を重ね掛け起動し、アキはスプラットを構え槍術雷術系複合スキル【雷號】の起動動作モーションに、ハルヒは風月の聖杖を振りあげ最上級マスターランク広範囲魔術スキルを、コウガはイフリートを抜剣し剣術風術系複合スキル【クリア・エッジ】を発動する。

LV,40最強位怪物と平均LV,10の世界最強冒険者4人の今までで究極域で最難関の戦闘バトルが幕を開けた。





次回→3節【蹂躙と虐殺】                   END






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