姿のないジャバウォック

メタモルフォーゼ、って不思議と心惹かれるものがありますよね。
かの漫画の神様、手塚治虫もこのモチーフを好まれたと言いますが、このお話に感じた印象としては影――。

生き生きと律動するよりは心の影に包みこまれるような、丸みより角ばった鋭さを感じました。
どこまでもささくれ立っている心情を残酷さを孕んだ展開を通じて否応なしに突き刺してくるようです。
一話が一話としての役割を果てしなく果たされ、第二話に続いているけど続かない。現時点で先が気になって仕方ありません！
20160322

『笑わない』しか読んでないブギーポップを思い出しました。詳しくない私にも文章から舞台設定、キャラクターから「伝奇ジュブナイル感」というかまあそんなものがビシバシ伝わってきて、好きな人にはたまらないと思います。

物語は序盤でまだまだ謎は多いですが、『変身』を単に超常の能力を手に入れるだけでなく、同じ人間が自分と自分でないものを行き来するというアイデンティティの問題に繋げて語るのは個人的にとても好きなテーマですね。
そのあたりをどう掘り下げてくれるのか、これからどう物語が展開していくのか、期待しています。

練られた文章力ながら、良く言えば王道の、悪く言えばよくあるタイプの作品。……と思っていました。
なんて贅沢な真似をするのでしょう。少年とヒロインをきっちり描いておきながら、その全てを前振りに使うとは！　かわいさと暗さを兼ね備えた少女もあっさり世の無情に呑まれてしまう、容赦のない展開。もうすっかり先が読めなくなってしまって、いつどのシーンを読んでいても神経が張るようにさせられました。すごい。
この先どのように作中の出来事が動いていくのか、舞台に立ち続ける役者は現れるのか、気になります。

黄昏に染まる旧校舎。
猛り狂うは異形の怪物。
そして、それらを狩る謎めいた美少女。

この三行にキュンキュンくる方には、自信を持ってお勧めできます。
主人公と共に、血生臭くも蠱惑的な非日常へと一歩を踏み出しましょう。
我々の原風景がここにあります。

---ここまで3話時点での感想---






---ここから4・5話を読んでの感想---

と、思いきや！？
すみません、どうやら、『古き良き王道ジュブナイル』とはいかないようです。
ここからどうなるのか、全く分かりません。
しかしこれは、「不安」ではなく「期待」です。
先が読めない、からこそ、先を読みたい！　切にそう思います。

超然としているけどどこか幼さを残すかわいい女の子と出会って、嬉しくない人なんていませんよね。女の子かわいいです。
重厚な筆致と軽快な会話が心地よいです。今後の展開も楽しみにしています。