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筝曲の祖

先日、「ざくろ」を完結にしました。
(お読みくださった方、本当にありがとうございました……!)


筝(こと)を扱う話でしたが、私は肝心の筝について、調べてみるまでまったく知りませんでした。
人生で見たこともなければ弾いたこともない、ついでに言えば曲についてもほぼ無知です(お恥ずかしい限り……)。
筝に興味をもったきっかけは、「八橋検校」という人物の生い立ちを聞きかじったことでした。
八橋検校――盲目でありながら、若くして三味線の名手となり、一派をつくった稀代の天才です。
彼は三味線を捨て、のちに筝を学びはじめます。今日でも筝の代表曲とされる「六段の調(しらべ)」を作曲し、近世筝曲の祖と崇められるまでになった、日本音楽の歴史においても重要な人物です。
まるで物語のなかにいるような、本物の天才が史実のなかにいる――調べるうちに夢中になってしまいました。
八橋検校だけでなく、宮城道雄や、奥州俳壇の始祖・内藤義慨、筝という楽器についても知れば知るほど奥深く、未知の世界がどこまでも広がっていました。
で。面白い話がたくさんあったのに、作中に全然入れられなかったもんだからもったいない……! なので、覚えているうちにすこしだけ、こちらであれやこれをご紹介したいと思います。

➀ 検校とは

その昔、目の見えない人は「盲人」と呼ばれていました。
彼らの利権を守り、保護するために「当道」という組織がつくられ、盲人たちは特別な訓練を受け、琵琶や筝、三味線を弾き、生活の糧としました。
「検校」というのは、当道のなかでのランク、職格名です。
当道内でのランクは細かく刻まれ、下から座頭・勾当・別当・検校、さらにそれらを分け、区別しました。
「座頭」というのは、映画「座頭市」に出てくるあれですね。
冒頭で述べた「八橋検校」の検校は、だから当道のなかでの立ち位置、というか位の意です。(ちなみに八橋検校の本名は不明だそうです、謎……)

② 筝という楽器

筝の各部、名称には「竜」の字が使われています。
竜眼、竜舌、竜頭、竜尾――形が竜に似るからだそうですが、昔(宮廷筝曲の時代)には、筝は高貴な身分の人が扱う楽器だったので、そういった意も含め、竜の字があてがわれたようです。
弦は十三本、張り方によって流派がわかったりもして面白いです。

また、筝の種類は様々で、宮城道雄がつくった低音の出る十七弦筝や、平成になってから作られた二十五弦筝、宮廷筝曲の時代に使われていた飾り筝、なかにはピアノを模して(これまた宮城道雄氏が)試作した八十弦筝なんかもあったりします。八十弦って……どうやって弾くの(すごい!)

今年の一月、NHKで「古典芸能への招待 "芸の神髄” ~筝曲」という番組が放映されていました。その中で「二十五弦筝の交響譚詩」があり、運よくその演奏を聴くことができました。
歌はなく音だけの曲でしたが、二十五弦筝は低音が出るせいか迫力があり、通常イメージされる「日本らしい筝」とはまったく異なる雰囲気に感じられました。
聴いた曲のせいかもしれません。ひと言に筝と言っても、邦楽らしさのない音、というか、弾き方もできるんだなぁと、すごく興味深かったです。

……と、他にもまだまだあるんですけど(宮城道雄の死の謎、銘のあるいわくつき筝など)眠くなってきたのでこの辺でしめます。
本当は自分の手で筝を演奏できる機会があればもっとよかったのですが、楽器屋に行っても簡単には見つからないし、お試しレッスンの予約を考えているうちに書きあがってしまいました。いずれ弾きに行きたいと思います。

最後に、レビュー、コメント、応援をくださった方、本当にありがとうございました。読んでくださる方がみえるというのは本当に、奇跡に近いほどありがたかく、励みになりました。

そしてそして、これ言いたかったんですけど。
私は筝についてまったくの素人、何も知らないです!(弾いたことありませんから!)
なのでお詳しい方、間違っているところなどございましたら、こそっとご教授願えますと……泣いて喜びます。
以上です。それではー。

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