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アイにつける薬はないについて

二年ほど前に投稿していた「アイにつける薬はない」についての自己解釈的な長文です。別所には投稿していたのですがここに置かないのも変だなぁということで時間は経ちましたが投稿します。
作品はこちらから
https://kakuyomu.jp/works/16816700426655276862

○作品全体について
アイにつける薬はない(以下アイ薬)という作品を書いたきっかけは、度々Twitterでも言っている通り「女子高生と死体の組み合わせ絶対可愛い」という最悪性癖です。そこから構想を練って、Twitterにも上げているプロトタイプのアイ薬が出来ました。
連載しよう、と思ったのも実はほんの出来心です。プロトタイプを書き上げた時点では名前もビジュアルすらなかった作中の女子高生(連載版における藍沢芽愛)に姿と名前を与えてしまった瞬間私の中で「これ(アイ薬)連載したいな」になり、急遽タイトルを決め、話を膨らませた次第です。連載という形式も、小説投稿サイトにきっちり投稿するような形ではなく、女子高生と死体のハッピーほのぼのライフという意味不明コンセプトでTwitterでSS不定期掲載出来たらいいな、くらいだったので、まさかこんなちゃんとした(?)作品になっちゃうとは思わなかったところはあります。なので、カクヨムに投稿しているアイ薬はあくまで「連載版」という形で投稿してました。連載版のアイ薬にはちゃんと「幕引き」を作らなければなりませんが、私は芽愛と優希の話を、終わりがない摩訶不思議な女子高生と死体の話としても書いていきたい気持ちがあったので。
なので、いずれ気が向けば、アイ薬Twitter不定期掲載版も始めるつもりではあります。

連載するにあたって、アイ薬は芽愛と優希だけの話ではなくなりました。ぶっちゃけこのふたりだけでは話が作れない。そう考えて、新たに芽愛の友人と、優希の恋人(のフリをしていた女性)を作りました。このふたりを作って作品に投入したことで、アイ薬は「芽愛と優希の閉じた世界の愛の話」ではなく「様々な人間の様々な愛の話」に形を変えたような気がします。芽愛と優希を他者から見た話を書くために登場させたふたりですが、こういう風に作品の方向性も微妙に変わるとは思わなかったですね。一葉や凪砂の恋愛や愛に対する価値観を考え始めた時点で、話がそういう方向性になるのを予測できてなかったのは今思うとなんでや!?って感じですが。
話の内容としては、絶妙に共感しづらそうな愛の話になった気がしなくもないんですが、自創作に対しての他者の共感が得たい訳でもないのでその辺は気にしてないです。一葉と凪砂あたりはまだ辛うじて共感できそうな部分も作れるかな…と書いてる当時は思ってた気がするんですけど、時間を置いて読み返してるといやねーなって気持ちになってきました。
この辺は余談ですが、こういう群像劇っぽい雰囲気の話をあんまり書いたことがないので、初期のほうは書いてて楽しかったですね。後半はプロットも練らずに書いたせいで話に矛盾が生じないようにするのに死ぬほど苦労した記憶しかないです。矛盾はなるべく潰したつもりですがちゃんと読むと矛盾しかないような気もします。プロットはそこそこちゃんと作ろうという教訓を得ました。

○各キャラについての話
・藍沢芽愛
アイ薬のヒロインかつ恐らく作中一番ぶっ飛んでる少女だと思いますが、あれでいて芽愛の思考や本質は現実をしっかり見据えていて、リアリストな部分はあるんだろうな、と思っています。後天的な狂ってる部分と、先天的な、落ち着いている、現実を見ている部分はハッキリさせたいな、と思って書いてました。
芽愛は幼少期にずっと寂しさを抱えて生きていて、その寂しさを埋めてくれた優希に徐々に依存していくのですが、優希に依存してしまったからこそ優希に関する部分だけは最後の最後まで現実を見られなかったんだろうな、と思います。その現実を見てしまったら最後、芽愛は依存対象を失ってしまうから。
作中で芽愛での立ち位置は「加害者」です。内部でなにがあったとしても「人を殺す」という罪を犯した芽愛は、世間から見れば犯罪者で加害者だからです。ただ、現実を見られなかった芽愛にも悪いところはあるんだと思いますし、やったことは決して許されることではないですが、芽愛の視点に立つと、愛していた男に突然裏切られたようなものでもあるので、芽愛のことだけをあんまり悪く思えないな、とちょっと思ったりもします。
なお、芽愛の言動がふわっふわなのは彼女の本来の性格由来のものなのですが、あのふわふわした言動も、彼女がしっかりと現実を見られる、夢見る少女じゃないことを隠す一因になっていると個人的には思っています。
・相島一葉
芽愛の友人として登場させた少女です。彼女のコンセプトは「愛や恋が分からないと思っていたけれど、実際はそうでもなく、他人に恋する他人に恋をしてしまう難儀な性癖だっただけ」という感じでした。
一葉の周りに恋する人間は沢山居ただろうけど、その中で何故芽愛だったかと言われたら「恋する芽愛の姿が今まで出会った恋する人間の中で、一番芽愛が魅力的に映った」んだと思います。性癖と好みは別問題です。
一葉は上記のような人間を作りたかったのと同時に「優希と芽愛が本当に恋人同士である」と誤認させるために登場させました。むしろ彼女を作った本来の目的はこれです。なので彼女の回、芽愛と優希のお付き合いについてのモノローグしかない。芽愛と優希が楽しそうにお付き合いしている様子を見せつけるための回が一葉の話でした。
一葉の作中での立ち位置は「第三者」ですが、これは、一葉が登場人物内で唯一、優希と芽愛のいざこざに直接的に関与してないからですね。
ちなみに、芽愛と優希の最後を知ったら彼女がどうなるのか。こうなるかな、という構想は頭の中にちょっとあります。別所で出したいのでここでは話しませんが。
なお、一葉は最後のほうで芽愛のストーカーのようなことをしてますが、一葉がそういうヤバい子だったというよりは、初めての恋に翻弄されてああいうことしちゃったっていうのが強いと思います。多分本人はあれがストーカー行為で盗撮という犯罪やらかしてるとは思ってないです。
・佐藤凪砂
優希の恋人の女性です。実際にはフリですが。
彼女は「恋とか愛とかどうでもいいけど、一生独身でひとりぼっちなのだけは絶対に嫌」な人間として作りました。なので、凪砂自身に恋愛をしたいという欲は全くありません。だけど、凪砂は普通の平凡な人間だから。だから、世間の一般論に流される道を選んだ、選ぶしかなかったんだと思っています。
ただ、凪砂はそういう思考を持っていたから、恋人を作るのはだいぶ苦労したんだと思います。そんな時に出会った優希は、彼女にとって希望だった。凪砂も、優希のことはかなり気に入っていたと思います。優希の事情がなければ、間違いなく彼女は彼女の望む人生を生きられたはずです。
でもそうはならなかったのが本当に書いててやるせなかったですね。凪砂の作中での立ち位置は「関係者」ですが、本当の意味での今作の被害者は凪砂だと思っています。なお、彼女が関係者なのは、被害者という立ち位置はどうしても優希に与えたくて、ならその他の言葉で凪砂を言い表すなら?を考えた時に、関係者が一番しっくりくると思ったからです。事件に関わってしまった人間という意味での関係者です。
・平優希
芽愛に愛されて殺される青年です。芽愛をヒロインにするなら彼が主人公なのかもしれないですが、主人公というのもしっくりきませんね…。
優希はなんというか、優しすぎて芽愛を突き放せなかった、残酷な優しさを芽愛に与えてしまった人物だと思います。
作中の言動は酷いところもある優希ですが、彼は基本的には善人の部類の人間です。善人で、優しいからこそ優希は芽愛を突き放せなかったんだと思います。芽愛の傷つく顔を見たくないという理由で、優希は芽愛の依存対象として生きる道を選んだ。選んだはずだったんです。
だけど優希は、その役目を全う出来なかった。最期の最期に芽愛を酷く傷つけて、それでも芽愛の笑顔のために、自分も傷つく道を選んだ。ひたすら芽愛の笑顔のために生きていたのが優希という人間だったんだろうなあと思います。
ただ、ここまで芽愛のことを思っているけど、あくまで優希にとって芽愛は「妹」でしかなかったんですね。優希にとって芽愛は恋愛対象になり得ない存在だった。この隔たりが最期まで埋められなかった。優希と芽愛が、この隔たりに気づけなかった、伝えられなかったからこそ、アイ薬の幕引きはああなってしまったんだと思っています。
ちなみに、優希も凪砂のことは特段悪くは思ってなかったと思います。今まで芽愛に依存されていた分、凪砂の付かず離れずの距離感は、優希にとってすごく心地好いものだったのではないでしょうか。それでも結局、優希が大切にしたいと思える存在は芽愛しかいなかったので、作中では凪砂のことを見捨てるような形になってしまったんだと思います。
なお、優希の作中の立ち位置は「被害者」です。芽愛に殺されるという立場において、優希は絶対的に被害者にしかなり得ないので、彼の立ち位置はあくまで被害者だと考えています。彼に悪いところがないのかと言われると返事に困りますが。

以上、アイ薬についてのお話でした。
例によって、あくまで上記の話は個人的にそう思って書いたというだけの話なので、解釈等は読んでいただいた方それぞれ好きなように考えていただけたらと思います。

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