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『収監令嬢』思いつき小ネタ

マユ
「私が間違っていたわ、セルフィス」

セルフィス
「唐突にどうしましたか?」

マユ
「必殺技のことよ」

セルフィス
「ようやく気付いて頂けましたか。聖女に必殺技は要らな……」

マユ
「そうじゃなくて! 必殺技とは、鍛錬の果てに編み出すものだってことよ!」

セルフィス
「え、そっちですか?」

マユ
「思えば、レベル上げもせずに必殺技を覚えられる訳がないのよ。いわゆる経験値稼ぎが必要なのよね、絶対」

セルフィス
「は……」

マユ
「聖者学院でも実技はあまりできなかったし……。理論は勉強できたけど、それだけじゃ駄目だわ。実践しないと。でも、本はあるけど教えてくれる先生がいないのよね。トーマス先生にもっと色々なことを教わりたかったわ」

セルフィス
「全然聞いてませんね、人の話……」

マユ
「聞いているわ、一応。でも聖女が魔法の鍛錬を積むことは悪い事じゃないはずよ。それでね、セルフィス。私が経験値稼ぎできるようないい感じのダンジョンない?」

セルフィス
「ありません。あっても教えません」

マユ
「どうして?」

セルフィス
「魔物の聖女が魔物狩りしてどうするんです。世界のバランスが崩れますよ。そんなに魔王降臨を早めたいんですか?」

マユ
「あ、そっか。えっと、イミテーション的なものでもいいんだけど。マデラが闘技場でソイルスライムを出したみたいに」

セルフィス
「わたしが中庭で相手をしてあげます。それでいいでしょう」

マユ
「えええ……」

セルフィス
「何ですか、その不満そうな顔は」

マユ
「セルフィスは真面目に教えてくれなさそうだもの。お茶を濁して終わりそう」

セルフィス
「マユに魔法の指導をしたのはわたしですが?」

マユ
「それは感謝してるけど、もう要らないとか言ってる人が先生じゃあ……」

セルフィス
「それに魔法の実技指導ともなればある程度の結界も必要です。わたしの領域以外にそんな場所は……」

マユ
「結界……そうだ、マイヤ様!」

セルフィス
「は?」

マユ
「火の王獣、フィッサマイヤ様よ! 結界は申し分ないし、きっときちんと教えて下さるわ!」

セルフィス
「マユ、ちょっと待」

マユ
「ムーン! そういう訳でよろしく!」

ムーン
「また面倒なことを言い出したか。まぁいい」

セルフィス
「ムーン、またマユの企みに加担する気ですか!」

マユ
「言い方が悪いわね!」

ムーン
「マイヤも聖女に会いたがっていたし、ちょうどいい。退屈しないだろう」

セルフィス
「わたしが退屈しますが?」

マユ
「大丈夫、必殺技を編み出すまで帰らない、みたいな路線じゃないから」

セルフィス
「当たり前です! 外泊なんて許しません!」

マユ
「もう、セルフィスってば門限厳しいパパみたい……」


……という訳で、マユはフィッサマイヤの下で修業を始めました。(ただし通いで)
※トーマス先生:『特別魔法科』の魔法指導を担当していた老人。超一流の魔導士。第8幕第1話に登場。

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