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一人称多数視点

 現在、「貴女を守りたい!【少年探偵団の事件簿】」という物語を書いています。この物語の中の、第二章の登場人物として、寺沢譲治という絵描きを登場させました。謎多き人物として、少年探偵団を振り回す役柄なのですが、この寺沢譲治は、完結した物語「逃げるしかないだろう」の主人公でもあります。

 多少の設定の違いはあるのですが、「貴女を守りたい!【少年探偵団の事件簿】」という物語と、「逃げるしかないだろう」という物語は、同じ世界観、同じ時間軸を共有しています。「貴女を」は、一九八一年の大阪北摂地域を舞台にした物語で、「逃げる」は一九八〇年の大阪ミナミを舞台にした物語です。微妙にズレていて、微妙に交じり合っています。

 僕は、一人称という呼ばれる書き方にこだわっています。一人称は、主語が「僕は……」で始まる書き方で、主人公が語っているところに特徴があります。この書き方の長所は、没入感です。読み手が、物語に入り込みやすい。例えば、「貴女を」は子供たちの探偵物語なので、危険な調査を行ったりします。僕としては、読者に、まるで自分が主人公になっているような臨場感を感じて欲しい。その水準に至っているかどうかは別として、僕が一人称にこだわっている意図はそこにあります。

 ところが、一人称には短所もあります。主人公が見えている世界しか表現が出来ないことです。見えていない世界は表現(もし、表現したとすれば、その主人公は、エスパーか神様です)できません。でも、物語の展開上、主人公視点とは違う世界を表現する必要があったとします。その場合、語り部が、変わります。

 「貴女を」の第三章は、犯人の視点を取り入れました。それまでは小学生の主人公視点で、物語が進行していたのに、急に、犯人の視点で物語が始まりました。初めて読んだ方は、面食らったと思います。そういえば、「逃げる」も、語り部が沢山登場しました。主人公の寺沢譲治と、ヒロインの伊達明美を中心として、他にも三名の視点を取り入れました。それぞれの語り部に、背負っている世界があり、交じり合いながら物語が進んでいきます。

 「逃げる」には、スピンオフ作品もありまして、「その男、木崎隆【逃げるしかないだろう外伝】」では、主人公を追い詰めていくヤクザ者「木崎隆」を主人公にした、一人称の物語も書いてみました。

 振り返ると、結構沢山の登場人物を創造してきました。どの登場人物も、真摯に生きる姿勢を見せてきました。「貴女を」は今後、「逃げる」のその先の物語に入って行く予定です。まだ、粗削りなプロットですが、僕の作品を読んでくれている皆さんに楽しんでもらえるよう、頭を絞ります。これからも宜しくです。

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