• 恋愛
  • 異世界ファンタジー

読書メモ55

『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』都甲 幸治・中村 和恵・宮下 遼・武田 将明・瀧井 朝世・石井 千湖・江南 亜美子・藤野 可織・桑田 光平・藤井 光・谷崎 由依・阿部 賢一・阿部 公彦・倉本 さおり∥著(立東舎)2016/09

少し長いけど、まえがきから引用しちゃいます。

〈文学賞って何なんだ? 毎年秋になると僕は思う。(中略)そもそも文学って地味なものじゃないですか。書斎で作家がコツコツと書き上げたものを、読者が一人きりで一行ずつ読み進める。言葉の手触りを感じながら、脳内で細かく情景を組み立てていく。その過程で感じた喜びは、そう簡単には言葉にならない、ごく個人的なものだ。そうした実感や書き手への密かな感謝と、メディアが煽り立てる世界規模のスペクタクルとは、僕の中ではなかなかつながってこない。
 しかし、である。これだけ世界中で本が大量に書かれている時代に、どの本を読むかのヒントってやっぱり必要ですよね。そしてそれぞれの文学賞は、メディアで話題になる、帯に記される、受賞作が書店の店頭で山積みになる、などの形で確実に機能している。
 といわけで本書では、世界の八つの文学賞を選び、実際に受賞作を読んでみた。(中略)具体的には、小説家や書評家、翻訳家など本にまつわる様々な職業の人々に、一つの賞につき一冊ずつ、合計二十四冊選んでもらい、全てを読んだ上、鼎談の形で論じてみたのだ。〉

というわけで、各賞につき御三方ずつグループ対談してらっしゃるのだが、アカデミックな方々が「文学的には評価しづらい(笑)」とか「論文では取りあげない」みたいなことをおっしゃりつつ、わいわい語ってるのが、根っこはただの本好きなんだな~って感じがして面白かったです。
論文にしやすい作品/作家、賞をもらいやすい/もらいにくい作家、ってのはあるある~って気が非常にしますね! どんな業界にも褒められやすい人がいるってやつだと。

・これを獲ったら世界一?「ノーベル文学賞」
・日本で一番有名な文学賞「芥川賞」
・読み始めたら止まらない「直木賞」
・当たり作品の宝庫「ブッカー賞」
・写真のように本を読む「ゴンクール賞」
・アメリカとは何かを考える「ピュリツァー賞」
・チェコの地元賞から世界の賞へ「カフカ賞」
・理解するということについて「エルサレム賞」

と、名前だけは知っていたけど……という世界の文学賞についてすっごく学びになりました。現代文学を読むことは現在を知ることなんだなって思えたり、今まであまり読んでこなかったことを猛省。
ってなわけで、まんまと読みたい本リストが膨れ上がったのでした……。これ、死ぬまでには読み切れるだろうか……



『ウェブ小説30年史 日本の文芸の「半分」』星海社新書223 飯田 一史∥著(星海社)2022/06

おなじみの飯田一史氏。
30年史と銘打ってるので、内容はこれまでの本と重複するのかと思いきや、これまであまり言及されてなかった女性向けと海外ウェブ小説についてかなりの尺を割いてました。……のだけど、少女小説やライト文芸と呼称される前のキャラ立ちライトミステリーや華流ドラマに触れてきた人間から見るとヌケが気になったし(『宮廷の諍い女』はいいけど、同じケータイ小説発で過去に転移ものの『宮廷女官 若曦』に触れないのはどうだろう)、カクヨムなど2010年代後半の小説投稿サイトについては実際に使っているからのもにょもにょがあるし……つまるところ、あくまで外側からのその周辺(著者いうところのウェブ小説の書籍化というビジネス形態)の変遷なのだと。

(ところで。めちゃくちゃ私感ですが、Toブックスのラインナップを眺めているとめちゃくちゃ攻めてるなと感じます。このままの路線でいって欲しい。ぜひ。溺愛系メインとかに路線変更しないでくれ。ぜひ)

これまでの本でも過去の詳細なデーターやインタビュー記事まで資料を拾うのはすごいのだけど、実際にピンポイントで詳しいライターさんに取材したりはしないのだろうか、と思ってしまいました……。局地的に詳しい人はたくさんいても、総括するのはタイヘンてことですね。



『五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語』新潮選書 小林 登志子∥著(新潮社)2007/02

今までなじみのなさすぎた時代のせいで、読み始めはまったく全然内容が頭に入ってこなかったのですが、著者さんの話運びが上手で、資料写真や図解も豊富、史料を駆使して5000年前の生活の一部を窺うということで面白かったです。

交易品の中でもラピスラズリが重要、瀝青の万能性。それからちょっと円筒印章の印影にハマりました。図柄がなんかカワイー。そうですよねえ、粘土板の文化ですもの、コロコロスタンプが合理的ですよね。それにしたってなんかカワイイ。

そして、固有名詞がとても中二感……。響きが中二なんですよね、なんか。ということで、今度の新作短編のキャラ名は古代メソポタミアから拝借しようと思いました。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する