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絶望の十三章が始まるのか?

 年が明けて、おめでたい言葉が飛び交う頃、私は焦りまくっていた。寒い時期というのに額には玉の汗、動悸は激しく切迫し、いよいよ終わったと思った。

 意気込んで小説投稿サイトに初作品をアップしたものの、PVは一日約ゼロで、週平均でもやっと壱に達する程度だ。これだと閲覧数「千」に到達するまで、二十年近く掛かる。気が遠くなる歳月で、その頃には太陽系第三惑星が現存するか否かも怪しい。

「一旦、閲覧数がゼロになると、回復は絶対に見込めない」

 小説投稿サイト攻略法のようなサイトを見ると、そんなことが記されている。特にカクヨムには「スコッパー」なる作業人の読み専が少なく、埋もれた作品はそのままブラックホールに飛ばされ、二度と日の目を見ることはないという。

 本当かよ、と軽く絶望しつつ、改めて本サイトのトップページから自作の探索を試みるも、見当たらない…誰も到達できない銀河の果てに存在しているかのようだ。およそ観測不可能である。

 更に、埋もれた作品は、話数の多さ、ボリュームが仇となって、新規の読者が避ける傾向もあるという。なるほど、全三百話とかあったら、チャレンジしようとは思わない。

 全面的に手詰まりである。では、どうすれば良いのか?

 最初に「名刺代わり」の短編を投稿するのだという。これには得心した。しかし、手元に都合の良い短編のストックがあるはずもない。二度没にした恵まれない短編に修正を重ねて、何とか形にできないかと思い立ち、読み返すと、難解を極める心理描写が延々と続き、食欲も失せる感じだ。

 そこでタイトルと冒頭の一文だけを残し、ホラー仕立てにするという妥協案が頭に浮かび、取り敢えず一話から描き始めた。予定した全十話のうち五話くらいを執筆し、連載を差し替えようと密かに決意する。

 一月も半ばに近付いた頃、連載中の『曲藝團〜』に変化が起こる。複数のインフルエンサー的な作者に応援を頂き、閲覧数ゼロの氷河期が終わる兆しが見えた。連載継続を決めるの一方、十話まで書き終えた連作短編の取り扱いは宙に浮いた。三度目の没の憂き目である。

 そこで、当初、投稿先のひとつとして選択肢にあった某ア○ファポリスで、唐突に連載を始めた。それが『隻脚娼婦館』である。

 軽妙なタッチを心懸け、平易な文章でざっくばらんに綴った。全体の雰囲気の統一が難しく、ばらけた印象は否めないものの、八話前後まで書いて何か調子が上がってきた。登場人物が勝手に動き出すような感覚。更に、某サイトでの連載終了後、興が乗って三話執筆し、若干ストックも増えた。

「絶望の十三章が始まる」

 そんなキャッチコピーを最初に思い付いたが、過去の連載ではエピソード十個分しかななく、そもそも「章」ではなく「話」だった。ホラーとは言え、内容的にも暗いトーンは控えめで、暢気な小ネタの集積でもある。

 形容詞ひとつに腐心した『曲藝團〜』と比較すれば、書き手も面白がって気楽に綴り、奥に深いテーマが隠されている訳でもない。繋ぎのリリーフ役的な連作短編という立ち位置で、これが「名刺代わり」になるかと問われたら、作者の方は「途中からそんなこと忘れていた」と答えるしかない。

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