特集
以前、どこかで前職がSEだとお伝えしていたかと思いますが、アプリの開発現場では「バグ検出率」という言葉があります。プログラムの約1000文字あたりに1個のバグが隠れているという目安で、テスト工程で発見したバグ数が「バグ検出率」を満たないうちは未完成なのでリリースしてはいけないという決まりがありました。世の中には「失敗しなければ完成しない仕事」もあるのです。いまの若い世代は、失敗を恐れて新しいことに挑戦しない失敗恐怖症とでもいうべき人が増えているそうです。失敗すると叱られる、すべての努力が無駄になると思って竦んでしまうんだそう。でもね、成功している人で失敗してない人なんていませんよ。今回は『失敗からの成功』特集と題しまして、失敗をバネに成功を掴んでいく作品を集めてみました。いろんなことに挑戦すれば失敗もする、しかし何度も挑戦すればそれだけ成功のチャンスも多い。「天才と凡人の差は、失敗からいかに早く立ち上がれるかだ」とも言います。皆さんの人生にとってなにかのヒントになれば幸いです。
イジメが原因で引きこもり自殺した三十五歳独身男・早川拓海は、目覚めると高校一年生の頃にタイムリープしていた。過去の人生を悔いた男が、人生をやり直す青春学園ストーリーです。
過去に戻った拓海ですが、イジメられている状況は変わりません。それでもデブで落ちこぼれの自分を変えるためにダイエットを始め、勉強に集中し、友達を作ろうとする。その努力は少しずつ実を結び、高校生活が上向き始めていくのです。
主人公だけでなく、クラスメイトたちのキャラもいいんですよ。天才だけど孤独な金城くん、陽キャ女子だけど隠れ陰キャな唯華さん、イケメン男子コンビだけどアホなだけの空太と大地。それまで羨んでいたものが偏見だと知り、本当の友情を築いていくところが青春なんです。
そして未来では女優として名声を得ていた美少女・久川玲子が、自分と同じくタイムリープしてきたと知り、彼女との距離が急速に縮まって……。
ひとつひとつは当たり前のこと。でも、当たり前のことが一番難しいんですよね。運命はいつでも変えられることを教えてくれます。
（「失敗からの成功」４選／文＝愛咲優詩）
お針子見習いの少女アイリスは仕事を求めて、同じ名前の「仕立て屋アイリス」の扉を叩く。店長のイクトが採用試験として出したのは、多忙な彼に代わって店長としてお店を切り盛りすることだった。
突然、店長に抜擢されたアイリスですが、経営者どころかお針子としても新米の彼女は、針で指を刺したり、話を聞かずに注文を請けたり、生地の発注ミスをしたり、料金を受け取らずに品物を渡してしまったりと、失敗が続いてしまいます。
そんなアイリスですが、お客様にとって重要なのは失敗の有無ではなく、あくまでも完成品の出来なんですよ。独創的なセンスと誠実な仕事ぶりが口コミで広まり、冒険者、騎士、踊り子、お嬢様、ついには王族までがお忍びで訪れる人気店になっていきます。
アイリスの実力をイクトも認め、最後の試験として国をあげての仕立て屋大会へ挑むという矢先、都を騒がせる連続放火魔に家が放火されてしまい……。
アイリスは困難を乗り越えて無事に採用されるのか。失敗にめげずに頑張る女の子の姿に元気がもらえる逸品です。
（「失敗からの成功」４選／文＝愛咲優詩）
アイドル情報専門サイト「アイドルナウ」に勤めるライターの河合悠里は、編集長への度重なる反抗によりクビになってしまう。同日、巨乳が売りのアイドル桜井桜子は、メンバーとの不仲を理由にクビに。アキバで偶然出会った二人は、メイド喫茶を舞台にアイドル界を駆け上がる！
誰よりもアキバ文化やアイドル事情に詳しい悠里と、アイドルとしての熱意に溢れた桜子がタッグを組んでのアイドル無双が痛快なんですよ。
クビになって即日、メイド喫茶とアイドルを合体させた新規プロジェクトを立ち上げ、オタクが喜びそうな広告戦略、メイド喫茶にお客を呼び込む販売戦略を次々と打ち出していく悠里の企画力に脱帽です！
悠里にスカウトされた桜子はアイドルとしてのルックス、ダンス、歌唱力を兼ね備えた才能の塊、なにより人並み外れた巨乳に世の男性陣は魅了されてしまうんですよ。そんな二人が組んだのだからヒットしないわけがない。ライブもメイド喫茶も満員御礼！ これは推したくなる！
一方で、二人をクビにした張本人たちは不祥事が発覚して自滅していく因果応報が愉快なんです。不条理に負けず、愛と情熱で夢を掴んでいくサクセスストーリーです。
（「失敗からの成功」４選／文＝愛咲優詩）
幼い頃から不器用で失敗ばかりしてきた少年・神谷幸四郎。高校の入学式の日、気まぐれに訪れた生徒会室で悩みを打ち明けた幸四郎は、不器用を直す代わりに次期生徒会長へ立候補するように命じられてしまい……。不器用な少年が自分を見つめ直して成長していく学園物語です。
幸四郎くんの不器用さを直すため、現生徒会長の立村家司を始め、役員総出で取り組む不器用克服プログラムが読んでいてためになります。
最初の指導は、心理学が得意な副会長・瀬見良高貴の「ペルソナ」を使いこなせという課題！
確かに大人であれば誰しも人は仮面を被っているもの。偽物でも理想の自分を演じていれば、いつしか理想の自分に近づいている、そういうこともありますよね。どんな自分を見せたいのか、どんな自分になりたいのか。自分を観察し続けるうちに、やがて幸四郎の頭の中でもう一人の自分が語りかけてくる……。
第一の課題をクリアした幸四郎くんの前に次なる指導が待ち受ける。果たして幸四郎くんはすべての指導をクリアできるのか。同じ様に悩みを抱える思春期の学生さんに読んで欲しい一作です。
（「失敗からの成功」４選／文＝愛咲優詩）
