人見知りな僕と嘘つきの魔法使い 〜君が遺した最後の魔法〜

すみやき

プロローグ:最後の魔法と、春の足音

「見て。桜色っていうより、これはもう『白』だね」


 隣を歩く中学二年生の美凪が、舞い散る花びらを掌で受け止めながら、悪戯っぽく微笑んだ。

 少し幼さの残るその横顔は、僕が二十年前に出会った「魔法使い」に、驚くほどよく似ている。


「……相変わらず、君たちは夢がないな。それはソメイヨシノっていう立派なピンク色だよ」


 僕がわざと無愛想に返すと、美凪は「あはは」と声を上げて笑った。

 そのあどけない笑い声が、記憶の中の誰かと重なって、胸の奥がちりりと痛む。


 二十年前。

 同じように白く染まった桜の下で、僕は初めて「魔法使い」に出会った。

 

 季節外れの真っ白なミトンをはめて。

 嘘か本当かわからない言葉を、宝石みたいに散りばめて。

 僕の、灰色だった世界に勝手に色をつけていった彼女。


 今、美凪の手にはミトンはない。

 けれど、僕のポケットの中には、二十年の時を経てようやく解けた「魔法」の残骸が、今も温かく残っている。


 これは、人見知りで臆病だった僕と。

 世界で一番優しい嘘をついた、一人の魔法使いの物語。




『人見知りな僕と嘘つきの魔法使い』

~君が遺した最後の魔法~

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