結婚式

結婚式は身内や数人の知り合いを呼ぶだけの小さなパーティにした。会場は私がよく歌わせてもらっていたバー。マスターに結婚式場の相談をすると、


「うちでやっていいよ。人数少ないんだし。貸切にするからさ。」


と、快く会場を貸してくれた。

当日、私は白いドレスに身を包む。ウエディングドレスという程では無いが、彼が


「ドレス姿見てみたいな。絶対かわいい」


といったので着てみた。そこまでドレスに憧れがあった訳では無いが、いざ着てみると心が踊った。首元には、高校時代に先輩から貰った音符のネックレス。髪飾りなどは高校時代から友達の佳奈が見繕ってくれた。


「愛華が結婚かぁ〜。先越されちゃったなぁ。」

「佳奈だって彼氏いるんでしょ?どんな感じなの?」

「彼の親と気が合わなくてさ。でもいつかは結婚してやる!……そういえば、早瀬先輩からのプロポーズってどんな感じだったの?」


佳奈は惚気話を聞きたそうにニヤニヤしている。


「コンサート終わりに楽屋でだよ。」

「うわぁー、いいねぇ。で、プロポーズのセリフは?」

「それは……」


あの時のことを思い出す。2人で泣きながら結婚を誓った時のことを。


「……ひみつ」

「ええ〜なんで〜?」

「2人だけの秘密なの」

「ふぅーん、なんかいいね、そういうの」

「でしょ?」


私は自慢げな顔をした。


「愛華、入っていいか?」


部屋の外から玲先輩の声が聞こえてくる。


「じゃあ邪魔な私はおいとましますね。」


そう言って佳奈は去っていく。入れ替わりで玲先輩が入ってくる。白いスーツに身を包み、髪を綺麗に整えた彼。その姿を見ると結婚を実感した。その彼は私の姿を見たまま固まってしまった。


「……きれい」


彼の口からこぼれ落ちるように放たれた言葉に少し赤面する。


「……玲も綺麗だよ。……さっ、早く行こうか。もうみんな待ってるよ。」

「ああ、……って名前!それに敬語も無くなって」

「あの時の仕返し」


先輩の卒業式の時に急に名前呼びをされた時と同じように、無邪気な子供のような顔をして答える。


「名前呼び嫌だった?あと敬語がなくなるのも」

「……全然嫌じゃないです。むしろ嬉しいです。」

「玲が敬語になってどうすんのよ笑」


顔を真っ赤にした彼の顔を見られたので大満足だ。

集まってくれたみんなの元へ行く。私の両親にバーのマスター、佐々木さん、佳奈、他にも会社の同僚などを数人招いた。彼の両親は来なかった。ただ彼は全く気にしていないようだ。


「今日はお集まり頂き、ありがとうございます。思う存分楽しんでください!」


彼の言葉が終わるないなや拍手が巻き起こる。その後のパーティは賑やかなものとなった。最後には私たちの演奏。彼のピアノと私の歌声がバーに響き渡る。曲は初めて一緒に演奏した曲。当時とは違う、大人になった私たちの音。でも心は同じだった。

この日のことは一生忘れられない。私たちの人生の節目の音であり、これからの人生の、始まりの音となった。

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