第4話「真実を知る痴れ者」

ドンドンドン!


扉が、壊すつもりで叩かれた。

泣いているだけで一日が過ぎたらしい。喉は焼けるように痛く、目は腫れてまともに開かない。


——もしかして。


ほんの一瞬だけ、希望が胸をよぎった。

俺はふらつく足で玄関へ向かう。


無「とうさん! かあさ——」


漆「うわ。なにそれ、ガチでキメェ」


次の瞬間、視界が横に吹き飛んだ。

鈍い音。歯がぶつかり合う感覚。床の冷たさが、遅れて頬に広がる。


倒れたまま顔を上げると、そこには見慣れた三人の影があった。


漆「お前ん家さぁ、想像通りだわ。貧乏くせぇ」


生「犯罪者の家ってもっと汚いと思ってたけど。……逆に腹立つね」


正「まあいい。正義の名の下に、片付けてあげよう」


その言葉を合図に、家が壊れ始めた。


引き出しが引き裂かれ、食器が床に叩きつけられる。

割れる音が、まるで笑い声みたいに響く。


無「やめろ……やめろよ……!」


身体を起こそうとした瞬間、全身を貫くような衝撃が走った。

筋肉が言うことを聞かなくなり、喉から意味のない息が漏れる。


正「犯罪者の子供ってさ、やっぱ同じ匂いするよね」


聖正義は、感情のこもらない目で俺を見下ろしていた。


正「……消してもいいと思う?」


漆「ダメダメ。そこまでやると面倒くせぇ」


漆山はそう言いながら、バットでテレビを叩き割る。

画面が砕け、黒く沈黙した。


生「はーい、配信中でーす」


未来は、母さんが大事にしていた指輪を拾い上げ、

一瞬だけ眺めてから、足元で踏み潰した。


生「犯罪者の遺品とか、価値ないよね」


何かを言おうとして、声が出ない。

指を伸ばしても、力が入らない。


無「や……め……」


その言葉は、誰にも届かなかった。


漆「満足したわ。帰ろーぜ」


二人が玄関を出て行ったあと、

漆山がしゃがみ込み、俺の耳元で囁いた。


漆「お前の両親さ。抵抗もできずに終わったぜ」


口元が歪む。


「ほんと、ザコだった。“アブノーマル”くん」


扉が蹴破られ、足音が遠ざかる。


壊れた家の中で、俺は動けなかった。

痛みよりも、何よりも——

世界が、俺たちを人間だと思っていないことだけが、はっきり分かった。

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