第十話
流れていた血は、傷口に戻っていく。
額から出てきた弾丸をつまむと、野ばらさまは床に投げ捨てた。
「なかなか、痛かったぞ」
野ばらさまは無傷になった姿で、立ち上がる。
「心配をかけたな。水島、かける。もう大丈夫だ」
水島さんは、自分の胸に手を当てた。
「野ばらさまを信じておりました」
僕は野ばらさまを見つめる。
「野ばらさま、あなたはいったい……」
鬼村は動揺している。
「どういうことだ? たしかに殺したはず! なんで生きている?」
野ばらさまは鬼村に振り返る。
「あたしは不老不死でな。かれこれ二百年は生きている」
「そんな話、信じられるか!」
「別に信じなくていい。だが、私は嘘を言っていないぞ」
野ばらさまはなにかを思い出した様子で、懐から折り目がついた紙を取り出す。
どこかで見たことがあるような。
「そうそう。飲んでみたが、この毒まずかったぞ」
僕が鬼村に渡されて持っていた、包み紙ではないか。
恐る恐る僕は聞いた。
「なんで、野ばらさまがお持ちで?」
「かける、あたしの部屋に忘れて行っただろう?」
思い出した。
水島さんに声をかけられた時、野ばらさまのお部屋に落として行ったのか。
鬼村は再び銃を構えた。
「こうなったら、体を穴だらけにしてやるよ!」
野ばらさまは呆れたような表情を浮かべる。
「やれやれ。厄介な男だな。水島」
「かしこまりました」
水島さんは鬼村の銃撃を避ける。
鬼村の間合いに入り、銃を奪い取った。
だが、鬼村は胸ポケットからなにかを取り出そうとしている。
まずい。
僕は鬼村に向かって走り出す。
鬼村は銃を出す。
まだ隠し持っていたのか。
銃口を水島さんに向ける。
水島さんでも避けられない距離だ。
間に合わない。
水島さんが撃たれるのが先だ。
一瞬の隙さえつければ。
「鬼村!」
僕は大声を出す。
鬼村は僕の方に振り向く。
僕は右手で拳をつくり、鬼村の頬を殴った。
鬼村は倒れ、気絶した。
思ったより呆気ない。
右手が痛い。
水島さんは無事だった。
「百谷くん、命拾いしました。ありがとうございます」
僕の隣に野ばらさまが来る。
「かける、やるじゃないか。見直したぞ」
僕は野ばらさまと水島さんを見る。
「お二人が来てくれたおかげです」
鬼村と部下たちはその後、警察に逮捕された。
鬼村には、きちんと罪を償って貰わねば。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。