第5話気づくやつは、少ない
撃ち方が、変だ。
それが最初の感想だった。
「……なあ、今の見たか?」
拠点の端、モニターが並ぶ一角で、中年の男が言った。
年齢は四十代半ば。
無駄のない姿勢と、癖の抜けた視線。
「見てる」
隣に立つ男も、似たような雰囲気をしている。
どちらも、現役ではない。
だが、銃の扱いを忘れたことは一度もなかった。
モニターの中。
配信映像の端で、FLATが動く。
敵の射線に、わざと入る。
避ける。
距離を詰める。
至近で、撃つ。
「無茶だな」
「無茶だ」
二人同時に言って、少し笑った。
「でも――」
中年の男が続きを言う。
「ちゃんと“見て”撃ってる」
FLATは、弾をばら撒かない。
撃つ前に、必ず一拍置く。
外しても、焦らない。
「初心者じゃない動きだ」
「いや、初心者だ」
「じゃあ、なんだ」
画面の中で、FLATが一歩踏み込む。
ギリギリの距離。
「……度胸がある」
「違う」
中年の男は首を振った。
「度胸じゃない」
「楽しんでるだけだ」
その言葉に、隣の男が黙り込む。
「ロマン勢か」
「だな」
二丁拳銃。
扱いづらく、効率が悪く、誰も勧めない武器。
それでも、一定数、手放さない人間がいる。
「若いな」
「若い」
「でも、悪くない」
一方、その頃のFLAT。
「……あ、これ行けるかも」
本人は、ただ考えていた。
敵の動き。
壁の位置。
自分の足。
「もう一歩、近い方が――」
撃つ。
当たる。
「よし」
それだけだ。
配信のコメントが流れる。
《今の動き、うまくね?》
《初心者じゃない》
《軍人か?》
「違う」
中年の男は、即座に言った。
「軍人なら、ああは動かない」
「じゃあ何だよ」
「――遊んでる」
FLATは、チャットを見ることはない。
評価も、噂も、知らない。
ただ、次の道を見る。
案内はない。
でも、面白そうだ。
「……こっちだな」
モニターの前で、中年の男が立ち上がった。
「名前、覚えとくか」
「FLAT?」
「ああ」
「追う?」
少し考えてから、男は答えた。
「今はいい」
「そのうち、向こうから目立つ」
気づくやつは、少ない。
だが、
気づいたやつは、離さない。
FLATは今日も、真面目に攻略している。
――ただ、誰とも違うやり方で。
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