……騎士(ゼンシ)の異世界転移・冒険・探訪・帰還……
トーマス・ライカー
第1話 なぜか転移した
その日歩き始めたのは、確か…日が昇り出して2ハウだった……『流れ』を捉えて地景を詠む……すれば、眼を閉じても歩ける……だが1ハウ程前から急に湧き出した乳白色の濃い霧に取り巻かれると…いきなり『流れ』が全く違うものに変わって地景が詠めなくなった。
(……待て、止まれ……)
立ち止まって静かに立つ……そのまま振り返って、真後ろを向いて立つ……霧が湧く前の『流れ』とは全く違う……
(……めちゃくちゃだ……詠み採れる地景が全く違う……これは…戻っても無駄か……)
息を吐いて座る。
(……『ゾンシ』や『センシ』の寺院で読んだ記録に……ゼンシやジンシが時折行方知れずになって……『声』も届かなくなり……『輪』で観ても……繋がらなくなって……見付けられなくなると言う件りがあったが……もしや、これがそれか……ならば……もう戻れないと言う事か……)
眼を開いて立ち上がる……もう最初にどっちを向いて歩いていたのかも分からない……苦笑して歩き出した。
(……これがまあ……異世界に転移した、と言う事なのかな……)
また気付いて立ち止まり、2本のセイバーを取り出して起動させてみる。
うん。普通に起動する。
パワーを切って仕舞い、また歩き出す。
最大限に廻りの『流れ』を捉え詠みながら歩く……何が起きても対応できるように力を抜いてゆっくりと歩く。
やがて少しずつ霧が薄くなっていき、廻りの様子が観えてきて……太陽の淡い光も認識できるようになった。
(……太陽も違う……やはりここは、惑星バランタス4じゃない……だが宇宙歴が通じるなら、違う惑星に転移しただけで同じ宇宙だと言う事になる……が……どうもその可能性は低そうだ……『流れ』を捉えて詠む限り、人間のような知的生命体は多数存在する……だが総人口でも1億は超えないようだ……それに、高度に発達した科学技術を示す『流れ』が無い……『銀河連邦』でも『通商連合』でも…このような有人惑星が認知されていないと言う事は無い……やはり全く違う惑星世界……もしくはパラレルワールドかな……)
霧は少しずつ薄れて晴れていく……平地草原の一本道だ……太陽の高さから観て午前10時頃……季節は…春半ばかな……行く先8万歩ぐらいに、街の存在が詠める……それと…2千歩ほど背後を……ひとりが同じ方向に歩いている……全く違う世界なら、言葉も通じないか……私が身に着けているみっつのツールに備えられた翻訳機能に『
そう考えて
それから1.5ハウで、霧はほぼ晴れた……ここからは緩やかな下りで、そのまま街に入るようだ……観ると道を外れた左側……3ミット程の所に、少し大きい岩が鎮座している……少し寄る事にした。
後ろから歩いて来る人は…男性と捉えられるが…そのまま歩いて来る……今の処、私に対して注意も意識もしていないようだ……つまりそう詠める『流れ』は無い。
だが、妙な『流れ』を『彼』の周りに詠み取った。
何と捉えて詠めば良いのか……小さな空間の歪みのようなものが『彼』の周りを取り巻いて…そのまま一緒に移動している……その『歪み』のようなものを数えたら、16もあった。
さて……まだ腹はそれ程に減っていないが……何か少し…入れておくか……街に入って何かがあった時に……腹が減り出しているとマズい。
トラドの左に括り着けておいた布袋を外してケープの上に置き……中にあるそれより小さい布袋の口を開いて、小さい茶色の塊をひとつ取り出した。
トラドの右から提げていた水筒を取り出して……左手に持ったその塊に右手の水筒から、少しばかりの水を掛ける。
するとその塊は水を吸ってみるみる膨らみ……8倍ほどの大きさに膨れたので……ケープの上でよっつに千切り割る。
ほんの小さな袋を取り出して口を開くと……中の細かい
それぞれの袋の口を閉じて仕舞うと……ひとつを取り上げて、食べ始める……私がまだ『エンシ』であった時期に……私の『マスット』であった『ジンシ』に作り方を教わった『パルギ』と言う名の保存食料だ。
後ろの人が更に近付いて来る……やはり男性だな……被り笠を着けている……ケープは着けていない……服装のスタイルがよく理解できない……目立つ武器のような物は身に着けていないように観えるし、武器を携行していると詠み取れる『流れ』も無い。
私に気付いているが、好奇心と興味の『流れ』しか詠めない……道を外れて近付いて来る……最初のパルギの残りを口に入れた。
「……やあ、美味そうなものを食ってるな……」
彼が私に何かを話し掛けたが当然、理解できない……ウィスパー・コミュニケーターは短い雑音を流した……私は不思議そうな表情を作って小首を傾げ…軽く両手を広げて上げてから、『銀河連邦』で広く一般認知されている手話で…「言葉の意味が解らない……私は違う場所から来た」と示したが…解らなかったようだ。
すると彼は喋らずにケープに乗せた『パルギ』を指差し、両手で掬い上げるような動作を観せ、更に私の左手を指差してから自分の開けた口を指差した……『パルギ』を食べたいらしい。
岩の張り出しから降り、右手でひとつを取って彼に差し出すようにして観せる……彼が笑顔で歩み寄って来る……左手でセイバーを軽く押さえた。
彼が右手を差し出したので『パルギ』を手渡す……攻撃意識は詠めない……何歩か退がり、笑顔のまま頭を下げるとひと口食べた。
目を見張って左手で口を押さえる……もうひと口食べて、握った左手の親指を立てて観せた……『美味しい』と言う意味らしい……彼は左手に『パルギ』を持ち替えると、右手で服の合わせ目の中から何かを取り出して私に歩み寄って来た。
彼を観ながら右手でそれを受け取ると、彼はまた退がった……受け取ったのは材質の違う2枚の硬貨だ……金額的には、あまり高くないように観える。
彼はそのまま笑顔で、食べながら頭を下げて歩き出した……右手を挙げて挨拶して、そのまま見送った……トラブルにならなくて良かった。
右手の硬貨をもう1度観て、小物袋に仕舞う……硬貨を鋳造できる技術文明レベルを、低いとは言わないだろう。
また岩の張り出しに座ってゆっくりと『パルギ』を食べ……終わる……道の前後に人の存在を示す『流れ』は無い……張り出しから降りて水筒の水を飲み……ケープを取り上げて払ってから着け直す……服装と持ち物を確認してから、街に向かって歩き出す……人助けでもすれば…また硬貨が貰えるかも知れない……安全に眠れる場所が見付かれば良いな。
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