空想ドリーマー

みかる

プロローグ:独白

ーーーこの物語はバッドエンドである。ーーー


訂正、訂正。

バッド「エンド」、ではないね。

だってこの『夢』はずっと、今も続いているんだから。

私は失敗した。何もかも遅かったんだ。

もっと早くに自覚しておくべきだったなぁ。


私はこの世界でどうやっても主人公にはなれなかった。

できたのは、頑張っている風に見せかけて、認めてもらえるように精一杯周りの目を気にしてアピールすることくらい。

誰かに見てもらえたのかはわからないけど。


 今から語ることも、私が自分なりに頑張ったんだって褒めてもらうためかもしれない。こんな私でも悲劇のヒロインくらいにはなれるんだって、そんな慰めが欲しいのかもしれない。

 これが誰に届くかはわからないけども、きっと意味はあったんだって、そう思いたい。


まあ、あれこれ言ったって始まらないし、終わらないよね。

そんじゃ、さっそく語りましょうか。

こんな私の失敗劇を。







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Dr.


「夢津ー!そろそろ起きなさーい!」


瞼を擦って目を開く。

光が一気に飛び込んできて、世界はこんなに明るかったのかとぼんやりとした頭で考える。

今日はこのまま、この離れがたいベッドに捕まっていようかとも考えたけど、

ふとある友人のことが頭に浮かんで、この素晴らしい名案を破棄する。


ベッドから降りて私の部屋全体を見渡す。

私の部屋はシンプルなベッドや机が並び、一般的に女の子らしいといわれるようなものは置いていない。

そのまま空きっぱなしのクローゼットに視線を移すと、城上根高校の制服が目に入る。


「あ、学校・・・」


ベッドに置いてある目覚まし時計に目をやると、針は7時40分を指していた。

HRが始まるのが8時30分。学校までは片道15分。

いつもなら大丈夫な時間だが、今日に限って私は日直だ。

日直はHR前に済ませなくてはいけない仕事がたくさんあるのだ・・!


「ヤバいッ・・・!」


急いでパジャマを脱ぎ、制服に身を通す。

(布団は・・・帰ってからでいいか・・・・・)


扉を開け、階段を駆け下りる。

リビングでは父、妹が朝食をとっていた。


「おはよう!学校行ってきます!」


台所にいる母から声がかかる。


「夢津ー。朝ごh」

「ごめん!お母さん!今日は朝用事があって、早く行かないといけなくって、ここにあるパン、持って行っていい?」

「・・・朝ごはんは、そのパンだから大丈夫だよ・・・。

 そっかー、夢津と一緒に朝食を楽しむことができないのは残念ねぇ。学校気を付けてね」


はーい、と返事をして、玄関を目指す。

リビングの扉に手をかけたところで、小学5年生の我が妹、夢以が


「おねえちゃん!学校、頑張ってね!」


とあまりにも可愛くて抱きしめてしまいたいような、笑顔で見送ってくれる。


「うん!夢以もね!」


できる限りの笑顔で応えた。

よし、今日はきっといい日になるはずだ。そうに違いない。


「夢津、車には気をつけろよ」


厳格な父からも、ありがたい言葉を頂く。


「はい!

今日は6時間授業だから4時くらいには帰れる思います。行ってきまーす!」


靴を履いて玄関を飛び出す。

腕時計を見ると時刻は8時を指していた。


(走れば、間に合うはず!)


まだ高校に入ってから一年も経ってはいないとはいえ、学校までの道のりは目をつぶってもわかる。


走りながら我が家族のことについて思考を回す。


(温厚な母、厳格な父、天使な妹、そして私。こんなにいい家族のもとに生まれて、私は幸せだなあ。)


そんなことを考える。




 結果として学校には間に合ったが、日直の仕事を時間内に終わらすことができず、先生に怒られてしまった。

 先生のトレードマークである眼鏡からは炎が飛び出しているように見えて、(いや、あれが先生の異能だったのでは・・・・?)とても怖かった。

そんな怒らなくてもいいのに・・・・。

 友達の水中美憂ちゃんにもあきれられてしまい、今日一日は「寝坊の夢津」として、喜ばしくないレッテルを張られて過ごしたのである。


そんなこんなで部活には所属していないので、

学校が終わったら何もせず自宅に帰還した。


今日はちゃんと寝て、寝坊なんてしない!

なんていう誓いを立てて帰宅し、

一足先に帰っていた我が天使に癒された

きっと、今日の誓いは明日には忘れているだろう・・・・・


夕飯を食べ、風呂に入り、

勉強しようと参考書を開くが、そのまま布団にもぐりこみ、スマホをいじる。


時刻は11時を指していた。


(そろそろ寝るか・・・)


スマホを伏せ、瞼を閉じる。

きっと再び瞼を開ければ、いつもの朝が始まるだろう。


(ほんと、私って幸せだな・・・・。こんなに幸せならきっと、いい夢が見れるよね!)



そんな願いは叶わない。

この日から私は悪夢を見るようになる。


いや、でも本当はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













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