レイヤー・オーバー
ほとり
00
「恐れないで」
「恐怖が、あなたを消滅させます」
女はそう言って、そっと肩に触れた。
人であって、人ではない存在に。
「悲しみ、憎み、そして怒りなさい」
低く、諭すような声。
「それこそが、あなたの存在意味なのだから」
沈黙。
次の瞬間、空気が軋む。
――ニクイ。
かすれた声が、部屋に滲んだ。
――ニクイ……!!
女は小さく笑う。
「ふふふ。
それでいいのです」
影が歪み、輪郭を失い、床を這うように広がっていく。
――コワレロ……
――スベテ……!!
「ええ」
女は頷いた。
「壊しなさい。
あなたが憎む、すべてを」
怒りが満ちる。
恐怖は、もうどこにもない。
その瞬間、
“善良だった何か”は、完全に別の存在へと変わった。
女は背を向ける。
その場に残されたのは、
世界に触れる理由を得た、ひとつの災厄だけだった。
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