罪人

@yuta622

 第一話 始まり


これは俺が地球と言う惑星で犯した罪の贖罪の物語です。


苦しく、辛い物語です。


もしかしたら選択をあの時間違えなかったら普通に歳をとって、家族に囲まれて寿命で死ねたかもしれません。





怖い

怖い

怖い


その感情だけが、修の中に残っていた。

言葉を探そうとしても、他に当てはまるものが見つからない。思考はまとまらず、ただ同じ感覚だけが、何度も何度も繰り返されていた。


それが、元地球人・修が、転生後に抱いた最後の感情だった。


―――――


修は、確かに幸福だった。


学校では昔からの友人に囲まれ、くだらない話で笑い合う日常があった。テストの点に一喜一憂し、部活の帰り道に寄り道をして、夜にはスマートフォン越しに他校の恋人とやり取りをする。特別な才能も、大きな不幸もない、どこにでもある平凡な人生。


だが、それは決して悪いものではなかった。


将来に対する不安はあっても、「生きていること」そのものを疑ったことは一度もない。少なくとも、自分の人生が突然終わるなど、考えたことすらなかった。


一月一日。

日付が変わる、その瞬間までは。


耳の奥に、直接触れてくるような違和感が走った。

音なのか、声なのか、判別がつかない。


「$€%^$•€」


意味は分からない。

言葉ですらないのかもしれなかった。


それでも、聞いた瞬間に分かった。

――これは、理解してはいけないものだ。


背筋を冷たいものがなぞり、心臓が強く脈打つ。理由は分からない。ただ、本能が拒絶していた。


次の瞬間、世界が歪んだ。


視界が揺れ、足元の感覚が消える。立っているはずなのに、地面の存在が分からない。重力だけが、異様に強くなったように感じられた。


修は、自分の体に異変が起きていることに気づく。


重い。

いや、違う。


――動かない。


手足に力を入れたつもりでも、何の反応も返ってこない。指を曲げようとしても、足を動かそうとしても、意識だけが空回りする。頭はぼんやりとしていて、考えが途切れ途切れになる。


それなのに、体だけはやけに暖かかった。


柔らかい何かに包まれている。

逃げ場のない、密閉された感覚。


理解するまでに、時間がかかった。


体が小さい。

視界が狭い。

首が、自由に動かない。


――声が出ない。


その事実に気づいた瞬間、混乱が一気に押し寄せた。

叫ぼうとした。

助けを求めようとした。


だが、喉は動かず、音にならない息だけが漏れた。


ありえない。

現実感がない。


それでも、否定するには、感覚があまりにもはっきりしすぎていた。


周囲から、何かが聞こえる。


「@&¥@“‘.,」

「@&+*$+<**~」


どこかの言語だ。自分に向けられていることだけは、はっきりと分かった。


次の瞬間、空気が震えるような大きな音が響いた。

何かが壊れた音だった。


反射的に振り向こうとするが、首は固定されていて、視界はほとんど動かない。視野の端で、影が揺れた。


そして、唐突に。


支えていた感覚が、消えた。


体が宙に浮く。

落ちる。


――捨てられた。


そう理解した瞬間、強烈な恐怖が胸を締め付けた。


視界の先に、巨大な影が現れる。

それは人の形をしていなかった。大きさも、存在感も、修が知っているどんなものとも違う。


逃げられない。

抵抗できない。


体は動かず、声も出ない。

できることは、ただ見ることだけだった。


その光景は、記憶としてではなく、心に直接刻み込まれた。

これまでの人生で味わったことのない、純粋で、圧倒的な恐怖。


夢だ。

これは夢だ。


そう思うしかなかった。


だが、目の前の現実は、あまりにも確かだった。

願いも、祈りも、意味を持たない。


いやだ。

死にたくない。


そう叫んだつもりだった。

だが、声は出なかった。


恐怖だけが、限界まで膨らんでいく。


そして――

修の意識は、唐突に途切れた。


―――――


次に目を開けたとき、

そこは、また知らない世界だった。

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