なんか、最強の魔導師と融合しちゃったんだか、相手が堕天使でした!S

乙戸未史人

第1章:魔具を巡る旅の始まり1

僕の名前はサシャ。

ごく普通の冒険者…のはずだったんだ…


「がっ…」


「あっ…」

そんなサシャの目の前には、多くの盗賊の屍が築かれ、大地が赤く染まっていた。


「愚か者が…身の程をわきまえるのじゃ…」

そして、屍の中心にサシャが立っていた。

しかし、それは人ならざるオーラ放っていた。


目は赤く染まり、銀髪の髪は風にそっとなびいている。

絶対零度のような冷たい視線、そして傲慢不遜な態度。


普段のサシャは温厚で困っている人を放っておけない、いわゆるお人よしだ。

少し大胆なところがあるが、少なくても、そのような言動を取る少年ではない。

では、一体彼の身に何が起きているのだろうか。


「…がっ」

その時、生き残っていた盗賊が必死に這いずり逃げようとする。


「まだ生きておったか」

サシャ?は手のひらを盗賊に向けると魔法を詠唱しようとする。


「ト、トルティヤ…もういいよ。十分…!」

サシャが名前を叫び、制止しようとする。


「ダメじゃ」

だが、トルティヤと呼ばれた存在は、サシャの言葉を一蹴すると、躊躇なく魔法を詠唱した。


「無限魔法-羅刹の炎-」

次の瞬間、瀕死の盗賊が黒い業火に包まれた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

盗賊は断末魔をあげ、もがき苦しむ。


「人の命を狙う代償は大きい…覚えておくのじゃな」

トルティヤは、冷たい口調でそう宣告する。


「ううっ。まさかこんなことになるなんて」

その様子を見て、サシャは数時間前に自身に起きたことを思い出す。


数時間前。

月の大陸 トリア帝国領内 ガイエン郊外


「ここが、魔具が眠るっていう噂の館か……」

冒険者兼魔具ハンターとして各地を旅している少年、サシャは、息を潜めながら古びた館を見上げた。


ひび割れた石壁を蔦が這い、壁は長年の風雨に晒され、ところどころ崩れ、夕焼け空に黒い影を落としている。

足を踏み入れる前から、湿った土と朽ちた木材の匂いが鼻をついた。


冒険者。

この世界には、ごまんといる存在であり、世界中を放浪して旅をする者のことである。

主にダンジョンや遺跡を探索して財宝の獲得を狙ったり、宿屋で民間からの依頼を受けて報酬をもらったり、モンスターを討伐して素材を売ったりしながら生計をたてている。


また、『魔具』は文字通り『魔力を素材に作られた道具』のことで、その種類は多岐にわたり、数百を超えると言われている。

中には、その特殊な力に魅せられ、生涯をかけて収集する冒険者もいるほどだ。

サシャは、ある目的のために冒険者をしつつ、魔具を集める旅をしていたのだった。


「よし…誰もいない」

サシャは周囲の気配を慎重に探り、軋む音を立てる門扉を静かに押し開けた。


「うわ…これは…」

館の中は、外観以上に荒廃が進んでいた。

天井からは太い蜘蛛の巣が幾重にも垂れ下がり、足元の床には、踏みしめるたびに細かい埃が舞い上がる。

壁の装飾は色褪せ、剥がれ落ちた壁紙の隙間から、冷たい空気が忍び込んできた。


「うーん、魔具らしきものは見当たらないな…」

一つ一つの部屋を丁寧に見て回るが、目につくのは古びた家具や、装飾が施された調度品、そして埃を被った魔導書など、かつて誰かがここで生活していた痕跡ばかりだった。


「今回もハズレかな…」

サシャの肩が、ほんの少しだけ落ちた。

これまでも、魔具の噂を頼りに各地を訪れてきたが、そのほとんどが不確かな情報だった。


「仕方ない…次の部屋で何もなければ退散しよう…」

サシャは、重く湿った空気の漂う廊下を進み、古びた木製の扉に手をかけた。


「ぎぃぃ…」

錆び付いた蝶番が悲鳴のような音を立て、扉がゆっくりと開いた。中は、壁一面に本棚が並んだ書斎のようだった。


「うーん、書斎か」

サシャは期待せずに部屋の中へと足を踏み入れた。


「なになに…『魔力と魔具の関係性』『魔具の誕生経緯について』…」

背の高い本棚から何冊か本を取り出してみる。

表紙には見慣れない文字が並んでいるが、魔具に関連する書物が多いようだ。


「うーん…見たことのない文字で書かれてて読めないな」

興味を引かれて数ページ開いてみるものの、そこに記されているのはサシャがこれまで一度も目にしたことのない奇妙な文字ばかりだった。


「ここにいてもしょうがないな」

諦めかけたサシャが書斎を出ようとした、その時だった。


「ゴゴゴゴゴ」

背後で、低い振動音が響き、壁際の本棚の一つがゆっくりと横にスライドし始めた。


「なんだ!?」

突然の出来事に、サシャは身を翻して本棚の方を見た。

そこには、隠されていたように小さな扉があり、扉の表面には複雑な模様が光る、目に見えない結界が張られていた。


「…結界か。僕の魔法でもしかしたら」

サシャは警戒しながらも、奥に何があるのかという強い好奇心に駆られ、そっと右手を結界に触れてみた。


「魔法解除!」

サシャが魔法を詠唱する。

すると、まるでガラス細工が砕けるかのように、結界は音もなく消滅した。


「…よし」

サシャは、結界の先の暗闇に続く扉を開け、その奥へと足を踏み入れた。


彼は、結界や、魔法で施された錠を外すという、珍しい魔法の持ち主だった。


「うわ…薄暗いな…」

扉の奥は、冷たい空気が漂う石造りの空間で、足元には螺旋階段が続いていた。

壁には、等間隔に小さな灯りが設置されているものの、全体的に薄暗く、先が見えない。


「(この先に魔具があるのかも…)」

期待と不安が入り混じり、サシャの胸を高鳴らせる。

彼は一歩ずつ、慎重に螺旋階段を降りていった。


そして、長い階段を下りきると、そこは祭壇のような広い部屋だった。

部屋の中央には、黒曜石でできたような祭壇があり、その上に、脈打つように赤く光る球体が置かれていた。


「まさか…あれが、噂の魔具なのか!?」

サシャは逸る気持ちを抑えきれず、祭壇へと駆け寄ろうとした。

しかし、その瞬間、赤い球体が内側から強烈な光を放ち始めた。


「うわっ!」

思わず目を瞑ったサシャの視界は、一瞬白く染まった。

そして、再び瞼を開けた時、彼の目の前には先ほどまでとは全く異なる、信じられない光景が広がっていた。


足元には、白と黒の床が広がり、頭上には、無数の星が瞬く夜空のような空間が広がっていた。

どこまでも続く静寂の中、サシャは自分がまるで、世界から切り離されたような奇妙な感覚に包まれた。


そして、その前方には、純白のローブを身に纏い、背中には夜の闇をそのまま写し取ったかのような漆黒の翼を持つ、吸い込まれるような深紅の瞳をした美しい少女が、まるで氷像のように静かに立っていた。


「あの…ここはどこですか?」

サシャは、目の前の現実離れした光景に戸惑いを隠せず、少女に問いかけた。


「ここはお主の精神世界じゃ」

すると、少女はクルっと振り向くと、感情の欠片もない冷たい声で口を開いた。


※読んでくださりありがとうこざいます!

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サシャの前に現れた少女の正体は!?

1-2へ続く!!

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