第4話
翌朝。
ベッドの上で目を覚ますと、両脇に知らない女が寝ていた。
右に寝返りをうつとブロンドの長い髪をした女が、左に寝返りをうつと長い黒髪をした女がいる。
どうも俺は、二人に挟まれて寝ていたらしい。
なにか嫌な予感がし、恐る恐る毛布をめくると、二人とも全裸だった。
「なにこれ……」
状況がわからん。
酔った勢いで連れ込んだのか。だが酒を飲んだ記憶はないし、昨日のことははっきりと覚えている。
昨日のことを思い返す……。
〈
その時点で日が暮れそうな感じだったから、
「そのあとか……」
なにかあったとすれば、そのあとだろう。
だが真っすぐにアパートに戻ってきた記憶しかない。
ベッドの足元からそっと出た。玄関扉のポストに入っていた朝刊を回収する。何の気なしに開き、ページをめくろうとしてた指が止まった。
「10階層の
とんだ大ニュースだ。
まさか
これは上階層に挑む冒険者が増えるぞ。
背伸びをするような声が聞こえ、思わずびくっとした。
振り返ると、ベッドの上で二人が目を覚ましていた。毛布が、いい感じに二人の大事な部分を隠している。
1LDKの狭い部屋だから、彼女たちとの距離はそう離れていない。
どうすればいいのかわからず、扉の前から足が動かなかった。
一言、声をかけてみる。
「おはよう……」
ブロンドの女が振り向いた。
俺よりも若干年上に見える。
彼女は、にっこりと微笑む。
「おはようございます、デイモン」
おしとやかな声だった。豊満な胸元に目がいくも、俺はすぐに逸らす。
それより、なんで俺の名を知ってるんだ。
その奥の黒髪の彼女が、
「お腹が空いたぞ、デイモン。ディアは朝食を所望する!」
黒髪の彼女は、ブロンドヘアーの女よりも身長が低い。
声に幼さを感じるが、俺と歳が離れているようにも思えなかった。
「あの……どちらさま? 俺、君たちの名前すら知らないんだけど。それより、まず服を着て……」
「まだ名乗ってはいません」
「我が名はディアボリカなのだ!」
「わたくしはアンゼリカと申します、アンゼとお呼びください」
部屋の隅に立てかけられた、黒と白の鞘の姿が見えた。
剣が、見当たらない……。
▽
鞘が衣服に変化すると、二人はそれぞれ、黒と白のドレスに身を包んだ。
昨日回収した
「デイモンは、料理がお上手なのですね」
「冒険者なら誰でも知ってる調理法さ、臭い消しだよ。
そんなことより……。
「つまり、二人は俺が昨日みつけた剣ってこと?」
〈聖なる純白アンゼリカ〉と〈暗黒女帝ディアボリカ〉。
二人は、あの白と黒の剣だった。
人型になっている理由はわからないが、俺が信じられない素振りを見せると、すぐに剣に変身したから信じるしかない。
人が剣に、剣が人に化けるなんて聞いたこともないが、二人が食している肉は着々と減っている。幻覚ではないらしい。
「タンスから変な気配を感じるが、なんなのだ?」
現在、部屋に一つしかないタンスの中は、極寒と化していた。
さっき開けたら霜が降りていて、天井には
「これのせいだよ」と〈
「それは、
「道理で肉の鮮度がいいのだ。冷蔵庫替わりに使うとは、デイモンはちょっとアレなところがあるのだな」
「アレなところ?」
「ディア、失礼ですよ」
「うるさいのだ、アバズレめ」
アンゼが静かな怒りを浮かべた。
食器がひとりでに、カタカタと音を立て始める。
「ディア、なにか言いましたか?」
「アバズレだからアバズレと言ったのだ!」
ディアが無邪気な笑みを見せつけると、次はテーブルが揺れ始めた。
二人は睨み合った。
「い、痛い、痛いのだ! やめるのだ!」
アンゼにこめかみをぐりぐりされ、ディアが降参した。揺れも収まった。
手掴みで肉を食べようとしてアンゼに叱られ、ディアは不器用そうにフォークとナイフを使った。
仲はいいらしいが、二人の関係がわからない。
白と黒という対比……。宝箱の中に一緒に入っていたのだから、何かしらの関係性があるのだろうか。
肉をフォークで摘まみながら、俺は癖でスマウグを取り出し〈
―――――――――――――――――――
名無しの冒険者
階層:1
ホスト:1 クライアント:2.001.745
下記のスキルが使えます。
〈
ソロで冒険者やってます。
―――――――――――――――――――
「ん、一十百千万……200万?」
一瞬、目を疑った。
が、昨日、鍾乳洞でスマウグを落としたことを思い出した。石か何かの鉱物が中に入り込んでいるらしく、今も取れないでいる。
何故か、200万人くらいにお気に入り登録されていることになっているが、完全に故障しているようだ。
ランキング確認は、朝の日課であり冒険者の
「……は?」
とんでもないものが目に入った。
ランキング2位に、11階層の
朝刊には、〈10階層〉とあったはずだが……。
「ん? これって、俺が撮った写真じゃ……」
「何を間抜けな顔をしているのだ」
「どうかなさいましたか」
裸の女が二人現れたと思ったら、10階層が開き、今度は11階層……。
「名無しの冒険者……」
なんで俺が、
頭の整理がつかない。眩暈がした。
ランキングの上位すべてが、俺が昨日アップした写真の話題で溢れていた。
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