第11話 空襲に比べれば、どうってことない。

兵庫県伊丹市在住だった父方の祖母は、明治生まれ。第二次世界大戦経験者で、とある華道の流派の偉い人でした。


1995年1月17日午前5時46分の地震で、寝室の和室の柱にかけてあった鏡が落下した際、腕をざっくり裂傷。


思ったより傷は深く、止血くらいしかしてなかったようで、結果、ちゃんとした手当てができた時は手遅れで、傷口から入ったバイ菌が元であれよあれよというまに体調不良が重なり、1995年6月に死去。


1995年6月には、危うく私もついでに命を落とすところでした(実話怪談『ウソのようなホントの話 愛奈穂佳の幽雅な日常』に収録)。


なぜ、祖母の傷の手当てが手遅れになったのか。


答えは簡潔。


祖母は、取り急ぎ止血だけして、ご近所さんの安否確認パトロールに駆け回り、怪我人の応急処置をし、誰から病院へ搬送するのが効率的かを指示していたとのこと。


とうに80歳過ぎており、大怪我してるのは誰がみても明白な老婆こそがまず病院で手当てを!と気遣うご近所さんには


祖母→老い先短い老婆より、未来ある若者の命を優先にするべき。


経験のない地震と余震にパニックになっているご近所さんには


祖母→空襲に比べれば地震の方が助かる確率は高い。慌てなければ助かる。空襲経験者の私を信じなさい。地震は落ち着けば大丈夫。


と鼓舞して回っていたとのこと。


実に祖母らしいエピソードでした。


祖母の言葉を信じて頼ってしまったから(祖母の怪我の手当てが遅れ、それが元で死期が早まった)……と、祖母の通夜や葬儀ではご近所さんたちが泣きながら謝ってきました。


ご近所さんたちは何も悪くないし、ご近所では(間接的だけど)祖母以外の死者は出なかったので、祖母は安堵してると思う、と両親他が慰めていて、私もきっとそうだと思いました。

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