002 最後の、日常

俺の名前は影浦陽介。そこら辺の高校に通っている普通の高校生だ。一応プログラマー志望。クラス共通のイメージとしては、「あまり喋らず、いつもパソコンいじっている奴」って認識らしい。その通りなので何も言えないが。


そんなことを考えながら自転車を漕いでいると、学校へ着いた。


自分の席へ座ると、


「陽介くんおはよー」


と南 野々花が挨拶してきた。彼女はちょっとおっとりしていて、クラスの中でも誰とでも話せるタイプだ。

俺のこともよく気にかけてくれる、数少ない「友達…と言っていいのか悩む距離感の人」だ。


「おはよう」


小さく答えると、野々花はニコッと笑う。その笑顔は、本当に柔らかい。

朝の眠気を、指先でそっととかすみたいに消してくれる。不思議な人だと思う。


「昨日の課題できた? 情報のやつ、難しくなかった?」

「ん、まあ普通」

「さすがは陽介くん、こういうの得意だもんね! ちなみに私は全然できなかった!」


野々花は「どーしよー」みたいな顔で答えた。そんな他愛もない会話のあいだに、教室は少しずつ賑やかになっていく。


窓から射す朝の光、机を引く音、笑い声と小さなため息。


――いつもと変わらない、平和な朝。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る