第4章:見せかけの灯り

澪は、現場のリビングに戻ると、窓際に立って外を見た。

霧が薄くなり、隣家のベランダがうっすらと見える。


「アイ、さっきの証言、もう一度再生して」


「了解。再生します――

『たぶん、あの家のリビングの方。窓の近くに明かりがついてたの』」


「……やっぱり、変だよね」


「どの点が“変”ですか?」


「この窓の位置から見えるのは、天井のライトだけ。

でも、現場の天井ライトは、今朝の時点で“消えてた”。

もし誰かが明かりをつけてたなら、スタンドライトの方。

でもそれは、外からは見えない位置にある」


「つまり、“見えるはずのない明かり”を、佐伯トキは見たと証言している」


「うん。もしくは、“見た”んじゃなくて、“見たことにした”のかも」


「偽証の可能性、浮上。動機の有無を再評価しますか?」


「まだ早いよ。でも、少なくとも――

“誰かが、あの時間に明かりをつけていた”のは、確かだよね。

それも、外から“見せるために”」


「偽装工作の意図があったとすれば、死亡推定時刻の操作、またはアリバイ工作の可能性が高いです」


澪は、窓の外を見つめた。

霧の向こうに、佐伯トキの家がぼんやりと浮かんでいる。


「アイ、佐伯さんの証言、全文記録して。あと、声の震えや間の取り方も分析しておいて」


「了解。感情分析を含めた証言プロファイルを作成します」


「……さて、次は“誰がライトをつけたのか”を探さなきゃね」

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