無能と蔑まれた貧民の少女を拾ったら、規格外すぎて世界征服が容易になった件 ~転生悪役貴族の野望録~
kuni
第1話
「……なるほど、最悪だな」
目を覚ました瞬間、俺は全てを理解した。
ここは異世界。俺は貴族の三男、アレクシス・フォン・ヴァルトハイムとして生まれ変わっている。そして――この世界は、前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム『薔薇と剣の幻想曲』の世界だ。
問題は、俺がそのゲームの悪役だということ。
豪華な天蓋付きベッドから起き上がり、鏡を見る。整った顔立ち、銀髪に青い瞳。間違いない。攻略対象の一人である王太子に嫌がらせをして、最終的に処刑される運命の貴族――それが今の俺だ。
「転生三年目にして、ようやく前世の記憶が戻ったか」
現在十七歳。原作のストーリーが動き出すまで、あと二年ある。
窓の外に広がるのは、広大な領地と美しい街並み。ヴァルトハイム家は辺境伯の家系で、それなりの権力を持っている。だが原作では、主人公である平民出身の少女に王太子を奪われ、嫉妬に狂って策謀を巡らせ、最後は断頭台の露と消える。
「馬鹿馬鹿しい」
俺は冷笑する。
前世の俺は経営コンサルタントだった。企業の戦略立案、市場分析、競合排除――それが専門だ。恋愛ごときで身を滅ぼすなど、愚の骨頂。
「それに、この世界には『魔法』がある」
手のひらに意識を集中する。青白い光が浮かび上がり、複雑な魔法陣が空中に展開された。
この三年間、俺は魔法の研究に没頭してきた。転生者としての利点は、前世の科学知識を魔法理論に応用できること。この世界の魔法は、理論的に穴だらけだ。改良の余地が無限にある。
「既に貴族社会の腐敗は見えている。王族も、大貴族も、皆が私利私欲に走り、民を搾取している」
魔法陣を消し、俺は決意を固める。
処刑される運命から逃れる方法はいくつかある。領地に引きこもる、王太子に近づかない、主人公を避ける――だが、それでは面白くない。
「どうせなら、この世界そのものを支配してしまえばいい」
冷徹に、合理的に考える。
この世界を裏から操り、最終的には全てを掌中に収める。そのためには、圧倒的な力と、緻密な戦略、そして――絶対的に信頼できる『駒』が必要だ。
扉がノックされる。
「アレクシス様、お呼びでしょうか」
「ああ、入れ」
執事のセバスチャンが入室する。老練な男で、俺の才能を理解している数少ない人物だ。
「貧民街への視察の準備を整えろ。今日中に行く」
「貧民街、でございますか?」
執事は意外そうな顔をする。貴族が貧民街など訪れるはずがない、という常識があるからだ。
「ああ。魔法の実験材料を探している。貧民街には、表に出ない才能が埋もれているはずだ」
実際、原作には貧民街出身の隠れキャラクターが何人か登場する。彼らを早期に確保すれば、将来的に強力な戦力となる。
「かしこまりました」
執事が退室する。
俺は再び窓の外を見た。
「さて、世界支配の第一歩だ。まずは『駒』を集めよう」
野望に、冷たい笑みが浮かぶ。
この世界の運命は、今日から変わる。原作のストーリーなど、俺が全て書き換えてやる。
そして気づいていなかった。
今日、貧民街で出会う一人の少女が、俺の野望を加速させる最強の『剣』となることを――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます