第2話 初戦
入学式はホームルームの後に行われるらしい。
広々とした体育館に大勢の人間が武器を持って入場する。
唯一武器を持っていない僕はあからさまに浮いている。
今どきではサポート志望の人間も武器を持つものだな。
僕は物騒な物持ちたくないから親に言われても武器は買わないと決めている。
「えーっと、僕のクラスの列は…。」
「リクトさん…でしたっけ?」
ふと後ろを振り返ると同じクラスの噂の人、リーカさんが立っていた。
「僕に何か?」
「挨拶をしにきただけです。クラスメイト全員とコンタクトをとるのは、メインアタッカーの基本ですので。」
「あぁそうですか…(興味なし)」
話が区切られたその瞬間、マイクに耳障りなノイズが入った。
無数の銃弾が天井に向けて放たれる。
「お前らぁ!!サポート志望とアタッカー志望で分かれろぉ!!騒いでんじゃねぇ!!」
「ガン先生!?」
生徒たちはぞろぞろとふたつのエリアに分かれていく。
僕もリーカさんに別れを告げてサポート志望のエリアへ移った。
真面目に整列して先生が話し始めるのを待つ間、スタッフの人が流れるようにみんなに一切れの紙を配っていく。
僕にも紙が渡された。
紙に書いてあったのは…。
「25…?」
「お前らには番号の書いた紙を配っている。同じ番号が書いてある紙を持ったやつとタッグを組め。その2人は必ずサポーターとアタッカーになるようになっている。」
なるほど。
入学式で模擬戦争でもやるつもりか?
僕はアタッカーのエリアに向かう。
相手を探すのには少し時間がかかった。
探している間、僕の頭は「どうかイカれたやつ以外であってくれ」と祈るばかりだ。
「あ、25。」
ふと後ろを振り返る。
長い黒髪を2つに結んだ背の低い女の子がこちらを見つめている。
どうやら祈りは届いたようだ。
「こんにちは。あたしは『クロウ』。」
「リクトだよ。」
クロウちゃんは言わずもがな大きい銃を背負っていた。
「リクト、何組?」
初手から呼び捨てか。
「C組だよ。」
「へぇ、羨ましい。」
「なんで?」
「ガンが担任でしょ。あれはあたしのお兄さんなの。」
あの人の妹だと?
ずいぶん血が受け継がれなかったみたいだな。
「先に言っておくけど、あたしはスナイパー。サポートなら必要はない。」
当たりの人だったな。
この人といるだけで戦わなくていいなんて、神のような存在だ。
「今組んだやつとぉ、3年間タッグになってもらう。」
卒業するまでクロウちゃんとタッグなのか。
彼女の言葉通り従えば楽勝な3年だな。
「これからよろしく。リクト。」
「うん!よろしくね。」
大体の生徒がタッグを組み終えた後、ガン先生のアナウンスが響いた。
「早速、最初の戦闘だぁ!」
「え?」
「今からスタッフがお前らに転送の魔法をかける。送られた場所で出会った相手と戦闘をしてもらう!勝利条件はもちろん、相手2人の"皮"を壊したほうが勝ちだぁ!」
"皮"とは、この世界の住民が戦闘をするにあたって本当の肉体が傷つかないように魔法で肉体を覆ったもののことだ。
俯瞰して見るとただ殺し合っているようにしか見えないけど、まぁ要するに2つめの命が出来たようなものだ。
みんなが日常的に使っている身を守る魔法もこの皮でできている。
「リクト。」
クロウちゃんの声がしたと思えば、白い光が僕らを包んだ。
***
「えーっと…ここは?」
気付けば、周りに廃墟ビルが連なる不気味な場所へ転送されていた。
「死角が多い。あたしにとって有利だけど、相手にとっても有利かもしれない。」
すごい。
切り替えが速い。
いち早く自分の状況を理解して戦闘のことを考えている。
「リクトはこの場所を歩いていて。あたしは登れる場所をみつける。」
「え、僕は何もしなくていいんじゃ…。」
「歩くだけ。できるでしょ?」
「は、はい…。」
クロウちゃんの魂胆は見え見えだ。
僕を囮にするつもりだろう。
スナイパーはなるべく、広い視野を持って相手の位置を把握するところから始まる。
僕をみつけた相手は確実に何か攻撃をしかけてくる。
攻撃された方向に焦点を合わせれば、あとは狙って撃つだけだ。
これはチームプレイというかなんというか…。
そんなことを考えて歩いていたら、視界の端がきらりと光った。
「あはは!無防備で何してんの〜??」
ナイフが足の側面ギリギリの地面に刺さっている。
血の気が引いた。
瞬間に、銃弾が声の方向へ放たれる。
「うわっ…。」
知らない声の方を向いて見る。
可愛い洋服を着た男の子と、スチームパンクの服を着た紫髪の女の子だ。
銃弾は当たったみたいだけど、掠っただけで皮は壊されていない。
「相方囮にするとか性格悪すぎぃ!!アンタ大丈夫??」
女の子が近づいてくる。
油断するな。
攻撃するつもりかもしれない。
逃げるか?
いや、あの長距離からナイフを投げてきたことを考えると無駄だ。
しかも相手の男の子は魔法の杖を持っている。
遠距離が得意なはずだから、ここで一番いい選択肢は…!
「え、ちょ…!」
ナイフを持った女の子が怯んだ。
僕は素早く相手の守備範囲に入り込んで
睡眠魔法を準備する。
「る、ルリちゃん!」
ひ弱そうな男の子が必死に僕に魔法の杖を向けようとしている。
魔法を準備していない片手で杖の先端を抑える。
およそ2秒の間の出来事だった。
紫髪の女の子は僕の睡眠魔法にかかり、男の子が放とうとした魔法攻撃は僕の手によって不発。
やりたかったことは全部できたけど、うまくいきすぎて逆に不安だ。
「リクト!皮を壊すからその2人から離れて。」
遠くの廃墟ビルの上からクロウちゃんの声が聞こえた。
僕は言う通りに2人から離れる。
「さ、させないよ!」
男の子が小さな結界を広げた。
これじゃ銃弾が通らないな。
「と、思うじゃん?」
「え?」
クロウちゃんがそこで放った銃弾は赤く、危険な光を放って結界に飛び込む。
そのブレのない軌道は、狙ったものを必ず射止めると信じてやまないものだった。
結界はあっけなく割れ、男の子の頭に弾丸が弾ける。
男の子を覆うガラスのような皮が姿を見せた。
そしてそのガラスはパキパキと音を立てて砕けた。
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