武を極めて転生したら魔法絶対主義の世界に幼女として生まれ変わって完全にオワタ件について

夏野草

第1話 武を極めし者の先

武術の先には何があるか?


それは一人の男が追い求めた世界だった。


強者を求め、相対しては倒していく。


男は格闘術、剣術、槍術はてには、杖術といったあらゆる技術を学んでいった。


道場破りを行い、あるいは戦場を駆け――、さらには魔族といったものまで行っていった。


果てには、魔王……、神と対峙まで果たす。


男は神殺し――――人間たちから畏怖の念を込めてそう呼ばれた。


男を恐れた王国からは騎士が派遣され、たった一人の男と戦争を行うこともあった。


男は強くなりすぎた。その果てに得たものは空しい孤独である。


相対する好敵手もおらず、人々からは恐れられるだけ……


ここが男の限界だったのかもしれない。


そんな男にも一つの弱点があった。それは――老いである。


時の流れは残酷で、やがて、老いには勝てずに朽ちて行った。


死ぬ間際、男は一つの願いを願った。





――――願わくは来世はより良い好敵手に巡り合えますように――――





――――――

――――

――





男は意識がもどり、目をゆっくりとあけた。


おかしい、体が動かない……


それにこの声、赤子の泣き声?


視界を見るに、男は誰かに抱きかかえられているようだった。


そして、目の前に女性の姿があった。


「奥様、生まれました! 女の子です」


そして、そのまま目の前の女性に抱かれた。


「良かった。よく頑張ったねアリシア」


男の声が聞こえた。どうやら、アリシアという女性が母親らしい。


――となると、この声の男が父親か。


「えぇ、あなたの娘よ。アダン……」


周りにはメイドが幾人かいる。部屋の装飾、広さ、そして従者の多さ。

貴族階級の者の家か?


そして――、

私を抱きかかえるアリシアという女とアダンという男を察するにこの者たちの娘として生まれ変わったらしい。


私の願いをどうやら聞き入れてくれて、転生したらしい。


可能であれば、筋力が勝る男性であってほしかったが、贅沢は言うまい。

また、人生をやり直すチャンスが来たのだから――


アダンが抱きかかえると私を両手で持ち――


「お前の名前はセフィーリアだ。セフィーリア・アルカ=ベスティアだ。」




この時、私はセフィーリアとなった――




――――――

――――

――



それから3年の月日が流れた。


生まれたころは歩くこともままならなかったが、やっと屋敷内を自由に歩けるまでになった。


今の状況を整理した。私はどうやら辺境の伯爵家の3人目の子として生を受けたらしい。父と母、そして兄2人についで娘の私というわけだ。


どうやら、辺境の伯爵家に私は生を受けた。兄が2人、その下の3人目となる。


屋敷内を歩けるといっても、少し歩くだけで息が切れるような体力――

こんな体力では武を極める以前の問題だ。


まずは基礎となる体力を作るところからだろう。

なるべく、屋敷内を歩いていた。


周りからは子供が興味津々に動き回っているようにしか見えないだろう。

そして―― 隙あらば走ったり、屈伸、腕立てなどをやっている。


もっとも――


「セフィーリアお嬢様! 兵士の動きを見たのか分かりませんが、そのような行為は鍛える兵士のやる行為です――、お嬢様はそのようなことをしてはいけません! 淑女としてのたしなみを――――」


「でも――」


「でも、じゃありません!!」


「もっと、おしとやかで慎みある行動をされるべきです! わかりましたか?」


「フィリニャ……」


「そんな目して甘えてもダメです!」


「フィリニャ、嫌い……」


「怒ってもだめです! 返事は?」


「ちっ――、はい……」


「よろしい! ――っていま舌打ちしました?」


「ナニモシテナイヨ」


「そうですか…… そうですねー。その代わりと言っては何ですが、私の膝の上で何か本でも読んであげましょうか。天使みたいなお嬢様を愛でながら――」


私――セフィーリア専属のメイドのフィリニャ。このメイドが実に厄介である。

お目付け役なのだろう、だが――それ以上にスキンシップが多い……

セフィーリアは専属メイドのフィリニャに事あるごとに怒られていた。


とはいえ、彼女は優秀だ。必要となることは大体聞けば教えてくれる。私に足りないこの世界の知識を補うにはうってつけだった。


「セフィーリア様、何の本を読みたいですか?」


「歴史の本を読んで」


「またですか、まぁいいですけど――」


この世界には前の世界になかった魔法というものが存在する。王国、貴族、一般市民どこを見ても、魔法というものが切り離せない世界。


もちろん剣技や武術といったものも存在しているが、あまり発展していないらしい。

実に残念ではあるが……


また、前世と同じように人間以外にもエルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔族という区分で他民族である。


そして――、世界には魔王やモンスターといったものも存在するようだ。


私がいる場所は人間が支配する地域で、辺境の地域を防衛のため拠点としている場所らしい。この辺りはモンスターも頻繁に出る地域であり、それを防ぐ役割を父が果たしているようだ。


ざっくりと話してしまうとこんなところだ。


私の知らない事――魔法に関心が集まっていた。


フィリニャが試しに見せてくれた。その魔法は水魔法で巨大な水の塊を宙に浮かせていた。セフィーリアはそれを見て心が躍った。


このような魔法というものを使って、どうやって戦ってくるのだろうか?

脳内で何度もどうやって戦うのか、脳内シュミレートを何度もしていた。


こういう世界だ。魔法の才があるものが優遇される。それは貴族はもちろん、最高峰まで到達した者を十賢人という称号が与えられ、一国にも大きな影響をお呼びすらしい。


十賢人――ぜひお手合わせしてもらいたいものだ。


こんな世界だ。剣術などの魔法をつかわない技術は著しく退化しているらしい。


実にもったいない。極めた武術と極めた魔法があれば、強さがさらに一つ昇華するというのに……


とはいえ……、まだ夢半ば――


私は基礎の向上が第一だ。まずはトレーニング。体力をつけなくては。

フィリニャに見つからないようにしなければ……




――――――

――――

――




それから、3年の月日が流れ、6歳になった。


両親から庭で遊ぶ許可をもらい――、庭に頻繁に出向くようになった。


「やぁ、セフィー、今日も元気だね」


「ラディお兄様、こんにちは」


スカートのすそを掴み、お辞儀をする。

彼の名はラディウス。この家の次男で5歳年上の11歳のセフィーリアの兄となる。


「こんにちは。ちゃんと挨拶できて偉いね」


「ありがとうございます!」


「ところでいつも、何をしているんだい?」


「トレーニングです。お兄様もどうですか?」


「あははっ、僕は遠慮しておくよ。頑張ってね!」


「はい!」


まだ兄は華奢だ。もっとトレーニングをするべきだと思うが……


私は相変わらずフィリニャには白い目でみられるが……

日課の基礎訓練ができるようになり、基礎能力が大きく向上した。


夜は屋内で、武術の型の稽古を行っている。


ゆっくりと、型に合わせて体を動かす。一つの型から次への型へとゆっくりと――


もちろん呼吸法も忘れない。幼子の身体ではあるが感覚は覚えていた。




そして――、私にも密かな楽しみができた。


屋敷の北側に広がる広大な森――――


もちろん簡単にたどり着ける場所ではない。それほどに厳重に塀が北に張り巡らされている。だが、今の私なら意図もたやすい。


セフィーリアは軽く地面を蹴り、塀をひとっとびで乗り越えた。


広大な森に囲まれた大自然――、訓練するには絶好の場所だろう。


この場所は立ち入り禁止の場所、つまりはモンスターがいるということだ!


そして、幼い女子の匂いはやつらにとって、獲物としては魅力的だろう。


「グルルルッ……」


「やはり来たか!」


この場所はモンスターと戦うことで試せるこの上ない場所だ。。


セフィーリアの匂いを嗅ぎつけたのであろう。


周囲に複数の狼のようなモンスターの群れ。


複数戦か…… 悪くない!


そのモンスターたちはセフィーリアの周囲に分かれた。


このモンスターは図鑑で見たことがある。確かワーウルフだったか……


ワーウルフは全部で4匹。逃げ場を奪うようにセフィーリアの周囲を取り囲んだ。


「4匹か……面白い! 同時にかかってこい!」


ワーウルフは同時にセフィーリアにとびかかった。



セフィーリアは地面を強く踏み込み、一匹に掌底を放ち――ワーウルフが吹き飛んだ。

背後から迫るワーウルフに回し蹴りで腹部に当てる――


2匹の追撃が同時に迫ってくるが、軽く避け――2匹の背後へと回った。


そして、拳で2匹が振り向く前に腹部に当てた。その間、ほんの1秒にも満たない。


セフィーリアの攻撃の衝撃でワーウルフは肉片となり、血と肉が雨のように降り注いだ。


「ふぅ、まだまだだなぁ……」


まだ幼子だから無理もないが……


「今日はこんなところかな……」


セフィーリアは森から屋敷へと戻った。


辺りは暮れ始め、そろそろ心配される頃だろう。はやく戻らないと。


塀を飛び越え、敷地内に着地する。


そして、庭を歩いていた。


「お嬢さま~~、いたいた~~!」


フィリニャが近づいてくる。


しかし、その表情はセフィーリアを見たら一変した。


「ぎゃああああああああああああああああ!!」


フィリニャは絶叫した。


何かあったのか!? と思い、自分の身体を見て――


「あ――」


自分の真っ赤に染まった姿を見て納得した。


ワーウルフの血肉を浴びた私を見てフィリニャは卒倒したのだろう。


その日、屋敷中が大騒ぎとなった。


これがこの後々に語られる。セフィーリア暗殺未遂事件である。




――――――

――――

――




そんなある日の事だった。


ベスティア家の執務室に男たちが集められていた。


アダンは村のギルド長や有力な冒険者を呼び、話していた。


「冒険者の情報を教えてほしい」


「はっ――、街はずれの南の場所、それと南のダンジョンのほうも凶暴なモンスターが見つかっております」


「ふむぅ……、そもそも凶暴な魔物など、この辺りでは見かけた報告がない。ここ最近のモンスターの発生率は異常だ。ギルド長、何か気づいたことはないか?」


「これは、スタンピードの兆候に非常に似ていますね。近いうちにダンジョンの奥から多くの魔物がこの街を押し寄せてくるかもしれません」


「それは由々しき事態だな…… 冒険者と我が領土の兵士。そして―― 王国に援軍の要請を――」


「分かりました――」


「間に合ってくれれば良いのだが……」


アダンの予感は的中していた。


翌日――、大量の魔物が押し寄せてきた!


窓から、砂煙を上げながら迫るモンスターの軍勢が見えていた。

イノシシのようなモンスターが何百、いや何千いるか?


「これは私も参加したい――」


「ダメです! セフィーリアお嬢様。いつものやんちゃとは話がまるで違います。あれはワーウルフとは違います。高位な魔物もいる集団です。近づけば、殺されます」


ワーウルフはいいのかっとつっこみがはいる。

しかし、こういうシチュエーションは武が滾るというものだ。私も参加したいのだが……



一方――


騎士団、冒険者が集められて、街へ向かってくるモンスターの軍勢に向かって――


「今だ! 魔法を撃ち込め――!!」


待ち構えて、魔法で対抗する――


「多すぎます! これでは……」


「いいから撃ちまくれ!!」


「魔法剣士部隊は前へ、一歩もこの先に通すな!」


「「「はっ――――――!!!」」」


魔法を剣に込めて、その刃で切り裂いていく。それに魔法が矢のようにモンスターへ降り注ぐ。


しかし、その数はさばき切れていない。徐々に押され始めていた。


セフィーリアはこれだけの魔物が逃げるということは、おそらくその魔物の後ろには恐ろしい何かがいるはずだ――と考えていた。


それは急に訪れた――


屋敷の窓は破壊され、そのモンスターはセフィーリアの前に顔を出す。

それは飛行型モンスター『ワイバーン』。


「セフィーリアお嬢様、こちらへ――」


護衛の人数はわずか5人。


魔法を唱え、放つ――


それはワイバーンに命中した――


だが、それは無傷であった。


「構わぬ、セフィーリアお嬢様を守るんだ。撃ち続けろ!!!」


しかし、全くの無傷――、そしてワイバーンが尻尾を振るい5人の護衛が吹き飛ばされた。


「セフィーリアお嬢様行ってください。フィリニャ、この命に代えましてもお嬢様を守ってみます!!」


「フィリニャ?」


「お嬢様、私はこの数年でしたがとても楽しかったです。ご武運を――」


「こっちです! このドラゴンめ!!」


フィリニャが水の魔法で高圧水のように射出して、ワイバーンに当てる。


完全にワイバーンの視線はフィリニャに向けられていた。


「お嬢様、逃げて!!!」


ワイバーンの振るう尻尾に撃たれ、フィリニャは倒れる。


おそらく脳震盪でも起こしたのだろうか。そのまま気を失っていた。


そんあフィリニャをワイバーンは食べようと――――



だが、今一歩のところで動きを止めた。



ワイバーンの正面には少女の姿――セフィーリア


セフィーリアの殺気を感じ取ったのだろう。ワイバーンの視線は完全にセフィーリアに向いていた。


「ひとつ、お手合わせを願おう! ドラゴン!」


セフィーリアは地面を踏みこみ、正拳突きをした。


その衝撃はワイバーンを吹き飛ばすにいたった。


だが、ワイバーンは無傷。


「うむ、少女の身体では限界か……」


怒り狂ったワイバーンは爪と尻尾でセフィーリアを襲った。


しかし、それはセフィーリアにはかすりもしない。


この程度の攻撃はあたらないが……、体力の限界が近い。


セフィーリアは軽く庭を走りこむ程度、6歳の少女にそんな大した体力などない。


ならば、次で決める――――――!!!


セフィーリアは壁を強く蹴り、ワイバーンに飛び込んだ。


そして、拳を掌底に切り替え、ワイバーンに打ち込んだ――


外骨格は堅い龍鱗に覆われているはずが、口から血を流してワイバーンは倒れた。


発勁を使った。体内に衝撃を与える武術である。


「硬いなら、内部から破壊するまで――」


セフィーリアの体はミシミシと悲鳴を上げていた。


「私の身体も限界だな……、まだまだ修行をしなければ――」


セフィーリアは倒れたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る