省エネJKの私がどうやら世界を救うそうです

司馬波 風太郎

第1話

ブッー、ブゥーとスマホのアラームの音が聞こえる。

 まだ起きたくないなと思いながらあたし――天ヶ瀬雪音は重い瞼をあげる。締め切ったカーテンから入ってくる陽の光が眩しい。

 ずっと眠れたらいいのにとは思うけれど高校生の私にはそんな贅沢は許されない。渋々布団から出て、服を着替え始める。

 それから親が用意した朝ご飯を食べて学校へ登校する。季節は冬、吐く息が白くなるくらい空気は冷え込んでいた。

 あたしはいつもの通学路を歩いていく、季節の移り代わりで多少の景色の変化はあるもののあまり代わり映えしない風景。

 でもそんな通学路の風景もあたしは好きだった。人によっては毎日あまり代わり映えしない光景に嫌気がさしたりするのだろうけれどあたしはむしろこんな穏やかな日常が好きだった。

 なんてことを考えていたらもう学校が見えてきた、考え事をしていると時間はあっという間に過ぎていく。少しこの1人きりで考え事をしていた時間に名残惜しさを覚えながらあたしは校舎へと向かった。



「ねえ~、雪音」


 午前の授業が終わってぼんやりとしていたあたしに声がかかる。あたしは声のしたほうを振り向いた。

 茶髪を肩より少し長めに伸ばした少女がそこにいた。顔つきは幼く、可愛いマスコットといった印象を強く受ける女の子。

 

「あかり、どうしたの?」


 彼女の名前は花村あかり、あたしの友達だ。


「そっけない態度とらないでよ~、雪音~」


 あかりは悲しそうな声で言うとあたしに抱きついてきた。まああたしがそっけない態度を取ってあかりが嘆きながらスキンシップを取ってくるのはいつものことだ。


「抱きつくな」

「え~ん、雪音が塩対応する~。でもそんなところが好き~」


 こういった会話は日常茶飯事だ。私は溜息をついてから彼女に尋ねる。


「どうしたの?」

「お昼一緒に食べてもいい? 1人で食べるの寂しいし」

「いいけど……座る場所はどうするの?」

「前の席の人って今いる?」

「いや、いないわ」

「なら席を借りちゃおう」


 言うが早いか雪音はあたしの目の前の席に座って自分のお弁当を広げ始めた。昼休みは多くの生徒が食堂に向かう。あたしの前の席の人も食堂に友達と一緒に行った。あかりはその席の主がいないのをいいことに席を占領したのだ。


「・・・・・・本当、行動が大胆だよね。あかりは」

「いやそうでもないよ~、だってわたし人見知りだし~」

「どの口で言ってんだ、どの口で」


 まあ確かにあかりは気さくに誰とでも話すけれど本音を簡単に見せるタイプではないのは確かだ。


「雪音はかなり分かりやすいよね~、見るからに省エネって感じ」

「まあ、間違ってはいないよ。基本的に無理な努力は嫌いだし。目的達成に対して合理的な手段を取ってるだけだよ」


 基本的に目的がない行動が嫌いなのだ、無駄にエネルギーを使うだけで結果が伴わないなんて最悪過ぎるんだよね。


「おおう・・・・・・高校生でその考え方、しごデキなビジネスマンみたいだね~」

「仕事は……まだしたことないから分かんないけど、勉強とかやる上で基本じゃない?」

「あ~~~、やっぱテストでトップの常連にいるやつは違うね~~」

「まあ、褒め言葉として受け取っておく」


 こんなふうに他愛のない会話を繰り広げながらあたしとあかりは昼食を食べていく。どこにでもあるような風景だ。


「今日はなにもないから付き合うよ」

「え、ほんと!?」


 私の回答を聞いたあかりは飛び跳ねんばかりに喜んだ。


「珍しいね、雪音が放課後付き合ってくれるなんて」

「あたしが付き合いが悪い人間みたいな言い方だね」

「いや、いっつも勉強したりしてるじゃん。遊びに来る雰囲気じゃないもんね。あと基本的に1人でいるほうが絶対好きなタイプだろうし」

「……まあ否定はしないよ」


 あたしはどちらかというと1人で過ごすのが好きなタイプではある。もちろん最低限の付き合いはするし、周囲の人間を嫌っているわけじゃない。


「だから珍しいなーと思っただけだよ。でも嬉しい」

「そんなにはしゃぐこと?」


 あかりの喜び具合にあたしは苦笑してしまう。


「うん」


 あたしの言葉にあかりは迷うことなく答えた、こうも迷うことなく答えられると少し恥ずかしい。


「あ、ありがと……」

「あ! 雪音照れてる~! そんなに私の言葉が嬉しかったの?」

「う、うるさい!」


 あかりにからかわれそうになったのであたしは慌てて会話を切り替えた。

 

「ふふふ、雪音のこんな顔が見れるなんて私は本当についてるな~、じゃあ放課後よろしくね」

「うん」


 こんなふうに友達と他愛のないおしゃべりをして放課後は遊びに行ったり、勉強したりする。それがあたしの日常だ。




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