『三世一貫 〜前世と来世とその俺と…』

有馬二郎三朗雅彩

第1話 ~生死彷徨~

「う~う・うう~痛って~」右脇腹が痛い・・・。


と感じうっすらと目が開いた。


「あっ起きた」

「こっちも?両方起きたよ」「看護婦さん」声が聞こえた。


視線を下に向けると俺の股間をポンポンと叩く女がいる。

右側には白衣の看護婦が「えっ?両方?」って振り向きクスクス笑ってる。

右腕には点滴らしきクダが繋がってる?


「何?どこ?誰?・・・」ここは?

そうか・・病院か?


女が抱き着いてきた「痛って~」少し動くとわき腹に激痛が・・・走る


「よかった~目が覚めて」「ホントよかった~」

「ありがとう心(しん)ちゃん」

ボロボロと涙を流してる、可愛い・・・?

この女は誰だ?何で俺の名前を知ってる?・・・。


あ、そうだ、(俺は思い出した)たしか?刺され・・・た。

少しずつ思い出してきた。


店の客に頼まれたタバコを買いに行って・・・。

「しん、俺のたばこ買って来てくれ」「わかるな?俺のは・・。」

「いつもの缶ピー(缶入りのピース)でしょ」俺は答えた


この客は平さん、平寛和さん、いつも“缶ピーは俺の為のたばこ”だって

名前にこじつけて永年、吸ってるそうだ

医者には“痔”なんだから強いたばこはやめろって言われてるらしい・・・。

いつも駄賃代わりに俺の“ショッポ”も買ってくれるからありがたい


そんなやり取りをして俺は店を出てタバコ屋に向かった。

「う~~さ(寒)ぶっ」

外は年末、もうすぐクリスマスだから星形とキラキラの電球。

赤と白と緑の3色ばかりが目に付く・・・。


缶ピーと俺のショッポを買って店に帰ろうとして歩き出した。

その時だった。



「キャー~」悲鳴と同時に俺の背後に女が?(うん?何?)と思った瞬間、

右の脇腹に激痛が走った。

(なんだ~これナイフ?)

もしかして、刺された?


なんで?


しかも、ペティナイフじゃね~か?

とっさに俺は叫んだ「これは、フルーツ用なんだよ(怒)」

いつも店のチーフに包丁を研がされてるから見覚えがある。

と、同時に左こぶしを目の前の男の顔に突き上げ・・・。

俺は倒れた。


なんか騒いでる・・泣き声が聞こえる・・・、

赤い回転灯がうっすらと見えた・・・

そこからの記憶は無い。


そうだ、あの時の女だ。


そうか、俺刺されたんだ、そしてここは病院なんだ。


ノックの音が聞こえ別の看護婦が医者を連れて入ってきた。

「目が覚めましたか?」

「はい、両方❣」笑って女が言った。


医者は「両方?」首をかしげてる、二人の看護婦は顔を見合わせ、口を押え指さしながら笑ってる。


「2日間昏睡状態だったんですよ」医者は冷静だ。

「ず~とその間、傍に付き添ってたんですよ、舞さんは」看護婦が言った。

マイ・・・。女の名前を初めてここで知った。


医者は傷口をみての包帯を替えるように看護婦に指示して、後で警察が来るとだけ伝え出て行った。


「しんちゃん、心三朗さん、ありがとう」


「え?なんで俺の名前?知ってんの?」


「お店の人達がそう呼んでたから」


俺が刺されて手術を受けてるときに店長たちが駆けつけてくれたらしい。

その時、店は大騒ぎで、ここのボーイがそこで刺されたって現場がすぐ近くだったから俺を知ってる客が伝えに来たみたいだ。


ようやくいろんな事が判ってきた。


再びノックがしてドアが開いた。すぐわかった。

警察、刑事だ

「わたし、出てくるね」

「私はもう色々聞かれたから」

「替えの下着とかいろいろ買ってくる」

「サイズ、Lでいいよね?」

「あ、うん大丈夫」

「中はMだけどね!いやSかな?」笑って舌を出して舞は出て行った。


俺は「は~?Mだよ」

看護婦もくすくす笑いながら、出て行った。


冗談じゃねぇ、なんだあの舞って女は!


「その時の状況を聞かせてください」刑事の質問が始まった。

色々聞かれた、いろんな事も知った。


犯人と舞の関係、なんで舞を刺そうとしたのか?

俺を刺したのは舞の客だったらしい・・・。


俺はとんだとばっちりで刺され、今ここにいる(正月は病院か~)



刑事達が帰った後、

サイドテーブルに置かれた証拠品の「缶ピー」を眺めた。

缶はひどく凹み、ナイフの切っ先が突き抜けた跡がある。

うっすらと血もついてるように見える。


ナイフは証拠品として警察にあるが、

この缶ピーはもう用なしという事で置いてあった

(平さん……痔だからって馬鹿にして悪かったよ)

(店の子からナプキンもらってるの内緒にするから、これからは・・・)

医者の話じゃ、

この硬いスチール缶を制服のベストのポッケに入れてたおかげでクッションになったって・・・。

これがなきゃナイフはもっと深く、内臓まで届いてたらしい。


“平さんの為のたばこ”が、結果的に“俺の命を救ったたばこ”になったわけだ。

つくづく、なんだ~このB級チンピラ映画みたいな展開は・・・。


世間はクリスマスなのに俺へのプレゼントは・・これ・・か?


缶ピーの横にあった水を飲んだ

「ぬる~」

水は冷えてないと上手くないな、窓から遠くに山々が見える・・・。

ふと想った・・・。


そして、あの夢のような空間で出てきた二人は?

蓮園神社裏の喫茶店は・・?

「目が覚めたか?心三朗」あ?あの時の男だ

車いすの女も一緒だ。

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