第6話 連鎖する頭痛、親心の凶器
「あの、マスター……。ついでにもう一つ、相談していいですか?」 扉に手をかけたまま、村人Aが気まずそうに振り返る。
「……まだ何かあるのか。お前の『ついで』は、往々にしてろくなことではないが」 聖騎士が腕を組み、冷徹な視線を向ける。
「いや、その……。実は最近、息子も頭が痛いって言い出したんで、俺がもらったばかりの鎮痛薬を二人で分け合って飲んでたんです。そしたら、あっという間に中身がなくなっちまって」
「二人で……分け合って……?」 モネが不穏な気配を感じて眉をひそめる。
「ええ。でもまだ二人とも頭が痛いっていうから、俺、ひらめいたんですよ!『そういえば、いつか自分が治った時に飲むのをやめて、棚の奥に隠しておいた残りがあったはずだ!』って。三年前くらいのやつですけど、熟成されてよく効くと思って、慌てて探しに走ったんです」
「……なんですって? ちなみに村人Aさん、あなたとジュニア君、その薬を何日続けて飲んでいたの?」 モネが、詰め寄るように低い声で尋ねる。
「えっ? ああ、えーっと……ちょうど10日くらいかな。痛みが引かないから、毎日欠かさず。俺が親切に『治るまで飲み続けろ』って教えてやったんだぜ!」
「10日!? 最悪だわ……!」 モネが額を押さえて天を仰いだ。
「いい、村人Aさん。市販の痛み止めは、本来5〜6回使っても良くならないなら、そこで一旦止めて病院へ行くべきものなの。それを10日も、しかも親子で毎日飲み続けるなんて、完全に『乱用』の域よ! お薬のせいで、脳が痛みの信号を出し続ける体質に変わっちゃってるわ!」
「じ、10日で『乱用』になっちまうのか……!? 俺はただ、早く治してやりたくて……」
「その『親心』が、お薬のルール(用法・用量)を無視した瞬間に『毒』になったのよ。おまけに足りなくなったからって、棚の奥の『三年前の薬』を掘り起こそうとするなんて……!」
村人Aが首をかしげると、聖騎士がふっと鼻で笑った。 「……案ずるな。お前の奥方が、先ほどそれをゴミ捨て場に運んでいくのを見かけたぞ。お前のような男に、二度とそんな危険な物を触らせないようにな」
「えっ!? 嫁さんのやつ、俺の秘蔵のストックを勝手に……!」
「『ストック』じゃないわ、『期限切れのリスク』よ!」 モネがピシャリと言い放つ。
「奥様がそれを捨てたのは、家族を守るための『正しい判断』。あなたも少しは見習いなさい! 息子さんを連れて、今すぐ病院へ行くこと。いいわね?」
******
◇モネの調剤室・「10日の壁」と「乱用」のまとめ!
「はぁ……10日間も連続で飲み続けちゃうなんて、村人Aさんの教育係失格ね! みんなはこう覚えておいて!」
〇 「5〜6日間」が相談の目安!
市販薬(一般用医薬品)は、あくまで一時的な症状の緩和。**5〜6日間(あるいは5〜6回)**使っても改善しない場合は、重大な病気が隠れているか、使い方が間違っている可能性があるから、服用を中止して医師に相談するのが鉄則よ。
〇 「10日以上の継続」は危険信号!
今回の村人Aさんみたいに、10日以上も自己判断で鎮痛薬を使い続けると、薬物乱用頭痛のリスクがぐんと上がるわ。試験でも「長期間の継続服用」は不適正な使用としてよく狙われるポイントよ。
〇 親心よりも「添付文書」!
お薬を飲むときは、まず「何日間使っていいか」を説明書(添付文書)で確認すること。村人Aの勘より、紙に書いてあるルールを信じなさい!
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