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 そもそもソルーシュがエリゴスに質問したところでまともな回答が返ってくるはずがないことを、彼はいい加減理解した方がいい。端から見ていれば彼らのやり取りはまるで年子の兄弟のように見える。(実際はかなり歳が離れているが)

もちろんそれは当の本人達にしてみればたまったものではない。

とにかくこれでは一向に話が進まないことを見兼ねてナズナが間に入り、話の本筋を元に戻した。


『それで、何故記憶の欠片の一つをミッターマイヤー家に隠しただと?

 あそこの家はああ見えて魔術による強固な結界が張られている。あそこに隠しておけば何となく安心だと思ったからだ!』


じゃあ最初からまとめて隠しておけばいいじゃないか、という三人の思いは豪快に無視された。彼の生きている魔界がいろいろぶっ飛んでいるせいか、こちらの世界の常識が通用しない。世界が違うのだから当然と言えば当然かもしれないが。


「…とにかく、一旦ノイシュテルンに戻ろうか」


「まあある意味いい機会かもな」


 そういう訳で三人は立ち上がり、フェアデルプ灯台から出る準備に取り掛かる。

一気に下りられたら楽なのだが、残念ながらこんな無駄に高い場所なのに、魔術で動く移動装置は設置されていなかった。

この灯台がいつの時代に建てられたものかは分からないが、推測するにかつてここにいた者達は移動装置を必要とせず、自らの魔法で灯台内を移動していたのかもしれない。

もし仮に設置してあったとしても、この荒れ様では魔物達に破壊されてしまっているかもしれないので、当然使い物にならない。

かといってナズナが神威やエリゴス達の力を借りて、転移魔法を発動させることは出来ない。


 何故ならナズナと転移魔法は相性が悪いからだ。

ノイシュテルンを出てからこの灯台に辿り着くまで、武術の稽古と並行して転移魔法の訓練も行っていた。だがどうもナズナには転移魔法のコツがうまく掴めず、うまくいったとしてもナズナ一人しか移動出来ないのだ。

ちなみに魔法以外で一気に下りる方法が全くないわけではない。この空中庭園の壁のいずれかを破壊して、直接飛び下りるという危険極まりない方法だ。誰もが思いついたものの、実行する者はいない。いたとしても、それは飛べる術がある者しか実行しないだろう。


 灯台の中層辺りに下りてきたところで、ソルーシュとヴィルヘルムが突然身構えた。

張りつめて行く空気にナズナも身体を強張らせる。身構えている幼馴染達に倣い、ナズナも短剣を抜き、すぐに動かせる体勢を取った。

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