2-10
「家へ帰るのだ。やはりお前を外に出すべきではなかった」
聞き捨てならない父の呟きがナズナの耳に届き、思わず足が止まる。
「どうして…そんなことを仰るの…?」
父は答えない。その上、こちらを見ようともしなかった。それに構わずナズナは続ける。
「お父様、あの方は私が狙いでした。彼は一体、私と何の関係があったのですか?」
沈黙を貫く実父にナズナは心が折れそうだったが、それでも辛抱強く返答を待つ。
父は明らかに何かを知っている。自分のことなのだから、ナズナには知る権利がある。迷いに迷って、ジークは唇を噛んだ。
「お前を守るためなんだ。今日のことはもう忘れて、今まで通り静かに暮らそう」
「お父様…!」
父の決断にナズナが異を唱えようとして口を開きかけた。だが、あの父がこれほど頑なに教えようとしないのは訳があるかもしれない。彼や神威の口ぶりからして、おそらく良いものではないことは明らかだ。それでもナズナは知りたかった。
ナズナの心情を察したエリゴスが姿を現し、助け舟を出す。
『話してやれ、半妖。ナズナはいつまでも幼い子供ではないのだから』
「だがエリゴス…」
『ナズナは知ることを選んだ。例えそれがナズナにとって辛いものでもな。あれは他でもない、ナズナのものだ。
ナズナが望んだのなら、教えてやるべきだろう』
そう言ってエリゴスはナズナの肩を支える。エリゴスの後押しもあって、ナズナはもう一度父に頼み込んだ。
「お願いです、お父様…私、知りたいんです…!」
ナズナの必死な顔が彼女の亡き母であり、ジークの妻の面影と重なった。そこでようやく彼は観念する。深いため息を吐いて、ジークは億劫そうに頷いた。
「…分かった」
「ありがとうございます!」
「ただどちらにしてもある物を取りに家に戻る必要がある。
先程の侵入者の件もあるから、続きは家で話そう」
「はい」
「あの…」
ようやく話がまとまったところでソルーシュが割り込む。
「どうした、ソルーシュ?」
「俺も…同席させて頂けないでしょうか…」
いつもの快活さを消し、真面目で神妙そうな表情を浮かべている。ジークは少し考え込み、そして何かを思い出したようだ。だが彼は何も触れずにあっさり同席を許可する。
「いいだろう」
そう言うとジークはナズナとソルーシュを伴ってノイシュテルン王宮を後にした。
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