魔法使いと炉心融解

兵法

SugarKiss BitterEnd

第1話 二人で一人

「チクショーが!視界が悪すぎて何にも見えねえぞ!」


吹き荒れる砂嵐が視界を遮る。


ここは中東にある砂漠地帯。


魔力によって異常成長した危険生物、"魔物"と対峙する1人の少女。魔法現象対策機関アンチマジックから派遣された魔法使いだ。


そして対峙する魔物は砂漠を己が縄張りとし、魚類が水の中を自在に駆けるように砂の中を泳ぐ怪物。

「サンドワーム」


「デケエ図体の割にはコソコソしてんだな!」


砂の中から、サンドワームの体の一部がが露出する。すかさず少女は飛びかかり、両手で持った剣をぶつける。


ガツン


甲高い金属と大量の火花が飛び散る。


「くっそ、かってーなおい!!」


少女はすぐに飛び退いた。


サンドワームは地中を絶えず移動し続ける特性があるため、その外皮は非常に硬い。物理的な攻撃を通すのは至難の業だ。


さらに少女の周囲を囲うように、巨体を移動させるサンドワーム。


「となると、やることは1つだな」


少女は、腰を落とし剣を深く構える。

深く息を吐き、深く息を吸う。


力を溜める姿勢である。


瞬間、少女が煌々としたエネルギーを纏い始める。

少女が自身が持つ莫大な魔力を剣に集中させる。


次の一撃のために。


サンドワームの動きも速くなる。砂中を、少女を囲むように高速で移動し攻め時を伺う。巨大な魔力を感知し喰らおうとしているのだ。


サンドワームが、一気に砂中に潜る。


静寂。


少女の魔力も臨界点に達する。


砂を割る爆発音とともに、サンドワームが少女の背後から飛び出し、巨大な口を広げ少女に突撃する。


少女はこれを待っていた。


一歩後ろに踏み込み下半身を支点に、素早く身体を捻り、そのまま剣を振り抜く。魔力を溜めた剣を。


「ぶっ飛びやがれ!」


放出。


一瞬の閃光と共に、サンドワームの口の中に巨大な魔力の塊がぶつけられる。放たれた魔力の塊が凄まじい轟音と共にサンドワームの口内、体内を突き抜ける。暴力的なまでの巨大な魔力の塊。剣に載せたその攻撃はもはや”剣撃”とは呼べるものではなく、”砲撃”そのものだった。魔力砲はサンドワームの体内を破壊し、外皮を体内から突き破り天空に放出される。


サンドワームの飛び上がった巨体は、砂上に墜落していく。

砂嵐が止んでゆき、空が数刻ぶりに青くなる。


「だー疲れたぜー」


地面に寝っ転がりながら文句をたれつつもまだまだ元気そうな少女。


千鶴ちづる、お疲れ様』


「おう、もっと褒めろ。頑張ったからな」


『今のはちょっと危なかったからもうちょっと安全な作戦を...』


「もーなんだよーまたお小言かよー気にすんなって。倒したんだし。てゆーかあれぐらいの雑魚ならヨユーだし。何?龍成りゅうせい、ビビってんの?金〇マついてんの?」


『金〇マは一応付いてるし、あとサンドワームは上位クラスの魔物だから、雑魚ではないんですよねぇ...』


砂上でポツンと1人の少女が、独り言を呟いていた。


鈍い風切り音と共に、回収班のヘリが近づいてくる。

お迎えだ。


「まあいいや、迎えも来たし。んじゃ、あとよろー」


適当にヘリに向かって手を振ると、少女は"変身"を解除した。

一瞬の発光の後、入れ替わるように一人の男が現れた。


「もー千鶴は相変わらずだなあ」


男は酷く疲れたように肩を落とした。

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