QPと恋するマリオネット【全12話60パート完結済】

ましだたけし

第1話 恋に臆病ならスマホであやつればいいじゃない! Aパート

 高校2年の11月。

 恋に恋する私が引き起こした騒動は今でも忘れない⋯⋯





 トゥルルル……ガチャ


『ほいほ~い。こんな時間にどしたん』


「あ、QPキューピー? これからウチに来れる?」


『ん~、今すぐは無理かな。二時間後、九時頃でもいい?』


 電話口の彼女の背景から雑多な音が漏れ聞こえる。外出中か? いや、待てよ⋯⋯まさか!


「……わかった。待ってるから急いでね」


『ほいほい。じゃあ後でね』


 ガチャ ツーツーツー




 午後十時。よい子は眠る時間にもかかわらず、玄関の三和土を前に仁王立ちの私は信じられないセリフを耳にした。


「で、どうしたん? こんな時間に呼び出して」


「いや、私がアンタに電話したのは七時だし。九時にしろと言った自分が一時間も遅れて来ておいてそのセリフかい」


 玄関で靴を脱ぎながら聞いてくるQPにジト目で斬り返すと彼女はタハハと笑った。


「いやいや、マー君と逢ってた最中だったから。悪いね。へへへ」


 ムキィー、むかつく。やはり男と会ってやがったか! なんでこの女に彼氏がいて私にいないんだ!


「あーハイハイ。先に私の部屋いってて。お茶入れてくる」


「ほいほい」とへ返事をし、パタパタと階段を上がっていくQPに「静かにあがれ!」とたしなめつつ見送ってから台所へ向かう。「何、なに? どうしたの?」と怪訝そうな顔つきのお母さんに友達が泊まることを伝えて、既に冷めている電気ケトルのスイッチを入れ直した。


 QPと初めて出会ったのは約四年半前、中学入学直後のオリエンテーションでの班別けの時だった。


「ぶは、アンタ、キューピーちゃん人形にソックリじゃん!」


 私の彼女に対しての第一声はコレであった。

 今にして思えば、初対面でこのセリフは流石に失礼な話だろうと思うのだが、まさに若気の至りってヤツだ。

 当然、班の他のメンバーも似た様なモノで、一気に爆笑の渦に巻き込まれた。当のQPも「は、ははは、確かに笑える⋯⋯。そっか、そうだよね」となんだか一人で納得していた。


 それ以来、彼女のあだ名はQPで定着した。それ以来、高校二年になった今でも彼女とは親友らしき関係を続けている。〈らしき〉なんて表現を使っているのは、親友ってもんがどんなモノなのか私には未だにハッキリしないからだ。他の友達よりちょっと仲が良い、ちょっと一緒の時間が多い。その程度で親友と呼んでいいのか私には判らない。ただ、やはり彼女とはウマが会い、一緒に居て楽しい。故に〈親友らしき関係〉なんて曖昧な表現をしている。もしかしたら一線を越えるのが怖いのかもしれない。一体彼女は私の事をどう思っているのであろうか——




「で、これを見て欲しいんだ」


 ズイっと差し出された化粧箱の煽り文句を見てQPは胡散臭そうな顔つきになった。


「えっと、これって……何? これで貴方もドールマスター? スマホで人が操れます?」


「ちょっとネットで見つけてね。試しに買ったんだけど、QPに協力してもらおうと思って」


 動画サイトを見ていて流れた広告の謎ガジェット。その名も【スマホDEマリオネット】。そんな馬鹿なと思う反面、夏のアルバイトで多少懐が暖かかった事と好奇心に負けてポチってしまったのだ。販売サイトに書かれていた説明によると——


「ふんふん、なるほどね~。つまり受信機……このアンテナの事か。これを装着した人を、事前にダウンロードしたスマホアプリを通じて指示した内容通りに操作できるってわけだ。ほえ~……あれ、協力ってつまり、アタシがアンテナってか受信機を付けて実験台になれってこと?」


 ようやく気づいたか。取扱説明書の冒頭を軽く読み流したQPの顔からサーっと血の気が引いていくのがあからさまに見て取れた。


「理解が早くて助かるよ。よろしくネ、QP!」

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